正スピネル構造を有する単結晶基板上に逆スピネル構造の強磁性体を成膜することで,界面にスピン偏極した2次元伝導層を目指している。初年度はMBEを用いて純オゾンを酸化源としてスピネルフェライト薄膜の成膜を行った。また基板として用いるMgAl2O4(001)表面の平坦化を行うために,大気中での熱処理条件を検討したところ,1200℃でステップ-テラス構造が現れることを確認している。今年度は昨年度に引き続き平坦化したMgAl2O4(001)基板上に,良質なスピネルフェライトを作製し,その伝導特性を評価する計画であったが,MBE装置に大きな障害が生じ修理不能となってしまった。そこで,反応性MBE装置をもちいて同様の実験を行うこととした。その際,界面における初期成長の観察が不可欠であることから,反応性スパッタリング法で成膜しながらRHEED像と鏡面反射成分の観察を試みることにした。 差動排気型RHEED銃をスパッタリング装置に取り付け,リアルタイムに動画としてRHEED像を記録した。スパッタカソードからの漏洩磁場と,スパッタ電圧によってRHEED像が滲んでしまうものの,RHEED鏡面反射成分は,明瞭な振動を示した。この振動周期は,スピネルフェライトのちょうど1/4単位胞分の長さに対応し,これはMBEやPLD法によってこれまで報告されているスピネルフェライト(001)のRHEED振動と同じものであることがわかった。 スパッタリング時にRHEED振動を確認したのはおそらく本研究が初めてであり,層状成長するような高品位な薄膜をスパッタ法でも成膜可能であることを意味している。
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