炭素系材料からの電界電子放出は、従来の金属材料からのものとは大きく異なるがその起源は明らかになっていない。当初は、炭化したシャープペンシル芯で観測される優れた電子放出特性の機構を明らかにすることを目的としたが、シャープペンシル芯において計測に耐えうる安定したナノスケール尖鋭試料を作製できず機構解明には至らなかった。そこで、良く規定された炭素系材料として、代わりにエミッタ先端に吸着したC60を使用したところ、単一の電子放出点からの電子放出が実現し、この分子特有の超原子分子軌道に類似した電子放出パターンが観測された。これは、炭素系材料からの電子放出を理解する上で重要な知見である。
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