「電界」による磁気異方性制御が実現すれば、電力消費フリーな次世代エコ磁気情報デバイス産業が創出され、人類の情報へのニーズと電力消耗という、相反する課題を解決できる。本研究「STMによるMgO基板上の単一Fe原子の巨大磁気異方性の原理解明」は、電界制御磁気素子として実用化に最も近いFe/MgO界面に焦点を当てる。(1)原子レベルで平坦なFe/MgO界面を作成するために、あえてFe(001)表面を酸化し、規則的なp(1x1)酸素原子膜を形成した(Fe活性を抑制)。これにMgを1原子層蒸着し、酸化+アニールで平坦なMgO膜となった。しかし、Fe(001)表面を酸化する過程において、酸化の温度条件によりFe3O4相、γ-Fe2O3相、FeO(=Fe(001)-p(1x1)O)の三相が発現することが判明した。我々の求めたFeO相は原子レベルで平坦であったが、Fe3O4相は表面に起伏~0.5nmのナノパターンを形成、γ-Fe2O3相は~1nmのナノキューブを形成し膜を壊す役割を果たすことが分かった。(2)Mgの蒸着レートを出す際、Fe(001)に直接Mgを蒸着するプレ実験を行っていた。我々はMgロッドを電子衝撃法で蒸発させて基板に成膜する。Mgはhcp構造であるにも関わらずbcc-Fe(001)の上に非常にスムーズに膜成長した。Mgは極めて低い表面エネルギーを有するためと考えられる。今後、このMg膜を直接参加しても平坦なMgO膜となるか探りたい。(3)単一原子にならずクラスター化してしまった。蒸着時に基板温度が4Kから10-15Kまで上昇し熱拡散した事が原因かと考え落胆した。しかし、別の実験で蒸着器坩堝内の磁性体表面が真空保管にも関わらず酸化し、蒸着した際、膜でなくクラスカー化する事案が生じた。そこで現在Feロッドを交換し実験を再開している。
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