研究課題/領域番号 |
15K13360
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
平山 博之 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 教授 (60271582)
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研究分担者 |
中辻 寛 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 准教授 (80311629)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ビスマス / 超薄膜 / 走査トンネル顕微鏡 / 角度分解光電子分光 |
研究実績の概要 |
Si(111)√3x√3-B基板上にBi原子を蒸着した場合、Bi(110)超薄膜は40原子層以上までの極めて広い膜厚の範囲で安定に形成されること、またこれはBi(110)面内のBi原子配列の単位胞の対角線が、Si(111)√3x√3-B基板格子の単位胞の対角線に対して4:7の整合費で完全に整合するためであることを見出した。またこのためBi(110)超薄膜は、Si(111)√3x√3-B基板上では、Bi(110)単位胞格子の対角線がSi(111)√3x√3-B基板格子の対角線と界面で格子整合する6つの特異的な方位に選択的に伸びた形状を取ることを走査トンネル顕微鏡の観察とその詳細な解析により明らかにした。 さらにあいちシンクロトロンセンターの軟X線角度分解光電子分光用ラインにおいて、Si(111)√3x√3-B基板上にBi(110)超薄膜をその場で作製するための試料ゴニオを設計製作し、これをビームラインに持ち込み、Bi(110)超薄膜を作製し、その電子状態を2次元ディテクターを用いて逆格子空間内の広い領域で観察することに成功した。Si(111)√3x√3-B基板上でBi(110)超薄膜は6本の特異的な方向に伸びて成長するため、結果的に試料は6個の異なる回転ドメインを持つ。角度分解光電子分光測定では、これら6個の回転ドメインの情報が重なったものが観測されるため、その解析は単純ではないが、詳細な解析により、Si(111)√3x√3-B基板上のBi(110)超薄膜は、逆格子空間のΓ点近傍にホールポケットを持つこと、またM点近傍にはフェルミ準位を横切るDirac電子的なバンド分散関係は現われないことが見出された。 さらに詳細なバンド分散関係の情報を引き出すため、より低エネルギーの放射光を用いた光電子分光が可能な、フォトンファクトリーにおいても実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、Si(111)√3x√3-B基板上へのBi(110)超薄膜の安定成長とその起源を走査トンネル顕微鏡観察により明らかにすること、およびSi(111)√3x√3-B基板上に成長したBi(110)超薄膜の電子状態をシンクロトロン放射光施設の角度分解光電子分光ラインを利用して実験的に評価することを計画していたが、これらは全て実行でき、予定とおり結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
Si(111)√3x√3-B基板上に成長したBi(110)超薄膜の、膜厚に応じた電子状態の変化を、走査トンネル分光法を用いて局所的かつ系統的に評価する。またシンクロトロン放射光施設での角度分解光電子分光法による評価も継続して行い、これらを合わせて、Bi(110)超薄膜がトポロジカル絶縁体となるために必要な黒燐構造を取りえるか、あるいはバルク安定なA7構造を取るかを明らかにする。 また以上の方法に加えて、走査トンネル顕微鏡によるdI/dVマッピングを実行し、Bi(110)面内およびそのエッジ近傍での電子状態や電子散乱過程を調べ、Bi(110)超薄膜が2次元トポロジカル絶縁体として機能する可能性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が予定していたフォトンファクトリーでの実験に参加できなくなり、これに関連する経費を使用しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越金額と本年度経費を合わせ、走査トンネル顕微鏡を用いた構造、電子状態評価を推進するために経費、および外部のシンクロトロン放射光施設を利用した角度光電子分光測定に関する経費及び旅費に充当する予定である。
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