研究課題
エクソソームとは細胞から放出されるナノスケールのベシクル(小胞体)で、直径は30~150nm程度、ガン細胞を含むあらゆる細胞から放出され、またあらゆる体液に含まれている。エクソソームはホスト細胞の性質を引き継いでいるため、エクソソーム解析はガンの早期診断に有力であると期待されている。本研究では、エクソソームの特徴抽出に、原子間力顕微鏡(atomic force microscopy, AFM)を用いて吸着様態と吸着に伴う変形を定量化する新しい手法を提案した。実験では、培養ガン細胞から抽出した3種類のエクソソームを用い、まず固体基板上の吸着様態をAFMにより観察した。その結果、変形のみを伴う単純な吸着、内容物が流失して潰れてはいるが破裂展開していない二層の脂質二分子膜形成、破裂展開した結果の一層の脂質二分子膜形成、および周辺のみ潰れて二層の脂質二分子膜を形成し中央に集められた内容物が半球をつくる目玉焼き形状の形成、以上の4種類の吸着が観察された。吸着に伴う変形とホスト細胞の特徴を高い確率で関連付ける方法として機械学習を採用した、AFM観察で利用できる形状抽出ソフトウェアから14パラメータを選び、AFM画像から得られる個々の粒子(エクソソーム)のデータを14次元空間にプロットすることにより判別器を作成した。その後、判別器作成に用いなかったAFM画像のデータをプロットしたところ、60~85%の確率で対応するホスト細胞の領域にプロット(正答)された。特に、基板として二酸化チタン単結晶を用いると、80~85%の正答率が得られた。従来、エクソソーム観察に用いられていた透過電子顕微鏡では、形状とサイズ以外の情報が乏しい。固体表面との相互作用に注目した本手法は、様々な基板を用いて吸着様態を比較することが可能であり、新たなガン診断法として期待できる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 15件、 招待講演 5件)
Materials Science in Semiconductor Processing
巻: 53 ページ: 28-35
10.1016/j.mssp.2016.05.018
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 55 ページ: (08NB17) 1 - 5
10.7567/JJAP.55.08NB17
Electrochimica Acta
巻: 214 ページ: 354-361
10.1016/j.electacta.2016.08.016
Thin Solid Films
巻: 615 ページ: 247-255
10.1016/j.tsf.2016.07.029
Applied Surface Science
巻: 396 ページ: 1206-1211
10.1016/j.apsusc.2016.11.112