研究課題
ヘリウムのみで確認されている巨視的スケールの超流動は、水素分子でも起き得ることが理論的に予想されている。しかし予想される超流動転移温度が固化温度よりも低いという問題があり、水素超流動の実現には固化温度以下での液体状態の実現が鍵となっている。表面融解はこの解決策になり得るとの指摘がこれまでになされているが、水素の表面融解についてはこれまで報告がない。本研究では2次イオン質量分析により固体水素最表面の融解を解明することを目的に研究を行った。具体的には、①固体水素薄膜の形成に十分な最低到達温度を有し、なおかつ最表面分析に必要な1000K以上の基板加熱や真空中での試料交換が可能な超高真空対応の極低温試料冷却マニピュレータを開発した。その結果、表面を清浄化した多結晶タングステン等の基板表面に固体水素薄膜を形成することに成功した。そして、②この固体水素薄膜を用いて2次イオン質量分析測定(昇温測定)を行い、水素薄膜の昇温時にある特定の温度で2次イオン強度が顕著に増大・減少する現象が見出された。解析の結果、これらの2次イオン強度の変化は最表面の相転移に由来することが明らかとなった。すなわち、2次イオン強度を基板温度の関数として追跡することで、最表面の融解温度を決定することが出来る。本研究ではこのような解析を実施し、2次イオン強度の変化が、最表面の再結晶化、融解、脱離によってもたらされていることを明らかにし、それぞれの温度を特定した。その結果、再結晶化が5K程度で起こり、その温度に同位体効果があることや、表面融解は再結晶化よりも高温で起きていることを初めて明らかにした。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 5件、 招待講演 4件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Analytical Sciences
巻: 32 ページ: 449,454
10.2116/analsci.32.449
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B: Beam Interactions with Materials and Atoms
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1016/j.nimb.2016.02.064
Nature Nanotechnology
巻: 11 ページ: 273,279
10.1038/NNANO.2015.276
Nucl. Instrum. Methods Phys. Res. Sect. B-Beam Interact. Mater.
巻: 354 ページ: 163,166
10.1016/j.nimb.2014.11.055
Geochem. J
巻: 49 ページ: 559,566
10.2343/geochemj.2.0385
JOURNAL OF THE SURFACE SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
巻: 36 ページ: 408,411
http://doi.org/10.1380/jsssj.36.408
http://samurai.nims.go.jp/SUZUKI_Taku-j.html