近赤外光パルス(中心波長800nm、パルス半値全幅40fs)を、独自に開発したマイケルソン型干渉計によりアト秒制度で位相ロックしたフェムト秒パルス列を作成した。その遅延時間を相対位相関係まで含めて光学干渉およびフリンジ分解自己相関計測により確定した。このアト秒精度の位相ロックパルス列を用いて、量子コヒーレンスを計測するためのポンプ・プローブ過渡反射率計測測定システムを開発した。 GaAsに対して干渉型過渡反射率計測実験を行い、電子・フォノン結合量子系における量子コヒーレンスの計測を行った。使用した光パルスのエネルギーは1.55eVであり、GaAsのバンドギャップよりも大きくため電子状態間の遷移が可能であり、電子フォノン結合量子系の励起ができる。過渡反射率計測ではGaAsの光学フォノン(LO)とフォノン・プラズモン結合モードのコヒーレントな振動が観測された。強度のポンプパルス対遅延時間依存性からは、電子コヒーレンスによる約2.7fsの干渉縞を観測した。試料温度90Kでは、量子コヒーレンスが光干渉に比べて約50fs長いことが観測され、バルクGaAs固体中にヒーレンスが保持されていることを確認し、干渉型過渡反射率計測法による量子コヒーレンス計測を実現した。特に、電子コヒーレンスを表す干渉縞の消失と再生が起こることを見出した。また、バンドギャップ以下のエネルギーの光パルスを用いた場合には、この振る舞いは観測されず、電子励起状態が強く関与していることを確認した。 理論研究では、電子2バンドと変位した調和振動子によるモデルポテンシャルを用いて、量子状態の運動方程式を2次の摂動で取り扱う理論を構築した。これを用いて、電子フォノン結合系でのコヒーレントフォノン生成と制御の実験結果を定性的に説明することができた。
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