研究課題/領域番号 |
15K13378
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
片山 郁文 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80432532)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | テラヘルツ / オシロスコープ / 電気光学効果 / シングルショット |
研究実績の概要 |
短パルスレーザーを用いた時間領域テラヘルツ分光法は、室温においても高い信号雑音比でテラヘルツ電磁波を検出できる手法として応用が期待されている。しかしながら、電場波形を取得するためには、テラヘルツ波とプローブ光との時間差を掃引する必要があるため、測定には時間がかかり、動的に変化する現象をとらえることは難しかった。そこで本研究では、チャープパルスを用いたシングルショットテラヘルツ分光手法と、長距離ファイバーにおける群速度分散を組み合わせることで、高繰り返しでテラヘルツ電場を取得できる新しい技術を開発、実証することを試みた。 用いた手法では、再生増幅されたパルスレーザーの出力をテラヘルツ波発生用と、プローブ用の二つに分け、プローブ光を、ガラスのロッドに入射させることで、波長ごとに遅延時間の異なるチャープパルスを生成した。また、生成したパルスを別途、パルス波面傾斜法によって励起したLiNbO3からのテラヘルツ波とともに、電気光学結晶に集光し、電気光学効果を用いて、テラヘルツ波を検出した。波長ごとに結晶への到達時間が異なるので、テラヘルツ波の時間情報が、プローブ光の波長にマッピングされる。したがって、スペクトルを見ればテラヘルツ波の電場波形を観測することができる。 実際に、上記のような系を構築し、シングルショットのテラヘルツ電場波形の検出を初めて実証した。本手法では、測定時間はレーザーの繰り返し周波数及び、オシロスコープのトリガレートで決まるため原理的に非常に高い繰り返しが可能である。本研究ではこれらの実証に成功した。また、観測された波形は、シングルモードのファイバーを用いた場合には、通常の方法で観測された波形と一致し、高い精度を有することもわかった。今後は、不可逆で動的な現象に本手法を適用し、そのダイナミクスを明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
提案通りに、シングルショットのテラヘルツオシロスコープ技術を実証することができた。また、シングルモードのファイバーを用いることで、その精度が向上することを明らかにできた。これらの結果は、提案手法の応用可能性が非常に大きいことを示す重要な結果である。また、当初の想定以上に進展した点として、テラヘルツオシロスコープの技術が、相変化材料の超高速分光などに応用することができたことが挙げられる。これらの点を考え、当初の計画以上に進展しているとの評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で、シングルショットテラヘルツオシロスコープの実証に成功した。今後は、この手法をより高感度化するとともに、時間窓や時間分解能の向上などの研究を行い、応用に向けた研究を加速させていきたいと考えている。特に、波形の精度を向上するために、非同軸のEOサンプリング法や、導波路構造を利用したEOサンプリング法などを用いて、検出感度を向上させるとともに、精度を上げていきたいと考えている。また、これを基盤として超高速分光分野のみならず、イメージングや、テラヘルツモニタリング、通信応用などの可能性も切り拓いて期待と考えている。
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