研究課題/領域番号 |
15K13380
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森 勇介 大阪大学, 工学研究科, 教授 (90252618)
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研究分担者 |
高野 和文 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (40346185)
吉川 洋史 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (50551173)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光プロセシング / 渦巻き成長 / X線トポグラフィ / X線構造解析 |
研究実績の概要 |
平成28年度には、本技術で渦巻き成長した結晶について欠陥のキャラクタリゼーションを行った。また、タンパク質構造解析にとって最重要である、X線構造解析分解能への影響も評価した。 結晶の欠陥評価は、実験室内の結晶表面観察装置とKEKなどの放射光施設を併用して行った。はじめに、結晶の大部分を渦巻き成長機構で成長させた結晶を作成した。この結晶の表面をごく微小量溶かすことで、結晶内部に取り込まれている不純物の密度や、結晶欠陥の密度を見積もった。その結果、渦巻き成長で成長した結晶は、劇的に不純物の取り込み量が低減していることが明らかになった。次に、同様にして得た結晶をKEKにおいてX線トポグラフィ観察し、結晶内部の欠陥の同定を行った。その結果、フェムト秒レーザー照射を施した場所から、らせん転位と呼ばれる欠陥が発生していることを確認した。このらせん転位の直上に、実際にうずまき成長が形成されていた。同様にして得た結晶をSPring8にて評価したところ、フェムト秒レーザーを照射したにも関わらず結晶品質は良好であり、単結晶性を保存しながら成長を続けていることが明らかになった。また、他タンパク質への技術適用という課題においては、インシュリン結晶について実験を行い、同様に意図した場所に渦巻き成長丘を発生させることに成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27~28年度に予定していたフェムト秒レーザー照射による渦巻き成長誘起条件の探索が順調に終了しており、結晶成長のかなり早い段階で渦巻き成長を誘起することに成功している。これにより、結晶全体の80%近くの体積が、渦巻き成長機構で成長した結晶を作ることができた。これらの結晶を用いることで、渦巻き成長誘起結晶の品質評価(平成27~28年度予定)を進めることができた。SPring8およびKEKという2つの放射光施設にて結晶の評価を行ったところ、SPring8では、結晶そのものに直接レーザー照射を施しているにも関わらず単結晶性が維持され、その品質は良好であるという重要な結果が得られている。また、KEKにおいてはフェムト秒レーザーにより、結晶内部へのらせん転位の意図的導入が実現できると示した。顕微鏡観察の結果と照らし合わせることで、このらせん転位上に渦巻き成長丘が発生していることも明らかになっている。結晶表面の微小量エッチングにより、渦巻き成長をした場合、従来多く見られる二次元核発生で成長した結晶と比べて飛躍的に不純物の取り込み量が低減していることが示されている。平成28~29年度に予定していた他タンパク質への技術適用という課題においては、インシュリン結晶について実験を行い、同様に意図した場所に渦巻き成長丘を発生させることに成功した。これにより、技術の汎用性を示すことができた。上記理由より、研究は計画以上に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度までに、フェムト秒レーザー照射による渦巻き成長誘起技術の確立を行い、本技術で得られた結晶の品質が良好であることを示した。さらに、平成29年度に実行予定としていた他タンパク質への適用については、既にインシュリンというタンパク質において成功している。そこで平成29年度には、同じタンパク質でも晶系が異なる場合に本技術が適用可能かどうかという点について実験を行う。また、タンパク質にかぎらず、有機低分子など幅広い材料に視野を広げて実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究議論のための旅費に使用する予定であったが、メールベースでの議論が進み、当初予定より出張が少なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度において試薬・旅費など、研究を大きく推進するために使用する予定である。
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