研究課題/領域番号 |
15K13381
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
谷田 純 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (00183070)
|
研究分担者 |
堀崎 遼一 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (20598958)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 散乱イメージング / ファイバ / スペックル / クラス判別 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究は、散乱媒体によるランダム符号化を応用した超高速ファイバ伝送イメージング技術の開発を目的とする。散乱媒体としてマルチモードファイバを利用することにより、撮像対象の時間・空間情報の符号化のみならず、ファイバを介した撮像情報伝送を実現する。 一般的な散乱符号化イメージングでは、撮像過程を線形システムとして記述し、既知の信号応答よりシステム行列を決定し、圧縮センシングアルゴリズムなどの数学的手法を用いて撮像対象を復元する。それに対して、我々のグループは、散乱媒体を透過した観測信号をニューラルネットワーク等の識別機に直接入力させ、機械学習アルゴリズムを適用することで、イメージング過程を経ることなく、2クラスの画像群(顔と非顔)が識別可能であることを見出した。同手法は、本研究課題であるファイバ伝送イメージングにおいても有効と考えられ、その適用を試みた結果、良好な結果を得ることができた。 検証実験として、透過型空間光変調素子に表示した物体信号をレーザーダイオードで照射し、その信号をマルチモードファイバを介して撮像素子で観測した。マルチモードファイバでの光伝搬により、ファイバ出射面では粒状スペックルが得られるが、そのスペックル信号を直接、識別器に入力し、サポートペクターマシン、ニューラルネットワークなどの代表的な教師あり学習アルゴリズムを適用して、2クラスの判別を学習させた。未学習データに対する識別を行った結果、原情報の1/10以下の信号数でも90%近い識別率が得られることを確認した。 この成果は、従来の手法とは全く異なる発想に基づいた新たなファイバ伝送イメージング技術の可能性を示唆するものであり、引き続きその発展性を検討していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、既存原理に基づくイメージング手法を計画していたが、新規手法の発見により、適用する原理を変更した。機械学習過程を数学的に定式化することは難しく、当初計画で予定していた撮像過程の定式化は未実施である。しかしながら、来年度に予定していたファイバによる原理検証システムによる検証実験は前倒しで行うことができ、総合的には、研究目的に対して順調に進展していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
現時点では、2クラスの識別器の実現性を示しただけに過ぎないため、イメージング技術への拡張を進める。具体的には、識別器の構成を工夫することにより、イメージ信号の出力を試みる。また、ファイバの状態や周囲環境に対するロバスト性を向上させる必要があり、それらを含めたファイバ伝送イメージング技術の開発を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画とは異なる新規手法の発見により、適用原理を変更し実施計画を変更したため、実験システムに関する物品費使用額が予定より少なくなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
変更後の実施計画に基づき、次年度使用額分については、主に新たな実験システムの構築用購入費に充当する。
|