本研究は,これまでの電気光学結晶をセンサとして用いた電界計測技術と比較して1桁以上高感度な計測技術を創成し,局在/伝搬するテラヘルツ電磁波 (THz波: 0.1 THz-10 THz の電磁波)の時空間発展を可視化することを目的としている.平成27年度は,(1)従来方式(偏光変調方式と呼ぶ)と新方式(非偏光変調方式と呼ぶ)との感度比較と,(2)非平衡二波長光源による感度向上の定量的評価に取り組む計画であった.
平成27年度は,ロールオフ特性に優れた光波長フィルタの調達にほとんどの予算を充てた.計画に従い偏光変調方式と非偏光変調方式について,平衡二波長光源を用いた実験により両者の感度を比較した結果,非偏光変調方式の方が偏光変調方式と比べて10dB程度SN比が高いことがわかった.これは理論計算から求まる感度向上を上回るが,従来方式の感度が環境変化に非常に敏感なため,理論限界のSN比が達成できていないことが原因と考えられる.センサに用いる結晶の電気光学係数と屈折率から求まる性能指数は,理想的な環境下(余剰雑音がない状況)を想定してのものであり,従来の偏光変調方式では周囲環境の変化(温度変化とファイバの力学的変動)による感度変動が顕著であるためこれを考慮して比較検討する必要がある.
非偏光変調方式において,非平衡二波長光源を用いたシステムでは,平衡二波長光源を用いたシステムと比べておよそ3dBの感度向上が実験的に確認された.ところが,非平衡光源のパワー比が20dBを超えると,信号強度のみならず,雑音強度も大きくなりSN比が飽和することがわかった.これは光アンプのASE雑音が原因と考えられ,平成28年度に新たに取り組むべき課題が明らかとなった.
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