本研究は,これまでの電気光学結晶をセンサとして用いた電界計測技術と比較して1桁以上高感度な計測技術を創成し,局在/伝搬するテラヘルツ電磁波 (THz波: 0.1 THz-10 THz の電磁波)の時空間発展を可視化することを目的としていた.従来方式である偏光変調方式と我々が提案する非偏光変調方式について,平衡二波長光源を用いた実験により両者の感度を比較した結果,非偏光変調方式の方が偏光変調方式と比べて10 dB程度SN比が高いことがわかった.これは理論計算から求まる感度向上を上回るが,従来方式の感度が環境変化に非常に敏感なため理論限界のSN比が達成できていないことが原因と考えられる.非偏光変調方式において,非平衡二波長光源を用いたシステムによる感度向上に取り組んだ.2つのLO光のパワー比をおよそ10とした時(50 mWと457 mW),得られた信号振幅は3倍となったが,同時に雑音レベルも1.5倍となった.その結果,検出光電流を一定としても,非平衡二波長光源を用いることで6 dBの感度向上が実現された.従来方式である偏光変調方式では電気光学効果の大きなEO結晶を用いることでしか感度向上を図ることができなかったが,本研究により提案された新たな感度向上法が実証され,合計16 dBの感度向上を実現した.加えて,DAST結晶を用い,30 GHzから500 GHzまでの広帯域に亘って電界可視化が可能であることも実証した.また,本可視化技術を用いて誘電立方体を用いたテラジェットの生成を実証するとともに,誘電立方体に斜めからテラヘルツ波を照射したときに生じる異常Guy phaseシフトを発見した.
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