超短パルスレーザーが光ファイバを伝播する際に発生する主として4波混合過程を利用して、ファイバ出射後の広帯域スペクトルの周波数モード間に量子論的相関が発生可能である。そこで、多数の直交固有周波数モード間で制御された量子相関を発生し、さらに多モード間量子もつれ状態を発生する研究を行った。 第一に、広帯域スペクトルを固有値分解解析し、直交固有関数(シュミッドモード)を摘出するための、マルチ周波数モード間量子相関解析理論を新たに構築した。これは、周波数モード間の共分散行列を用いた解析手法であり、直交固有関数の抽出と、量子相関を各モード毎に計算することが可能である。その結果、ゼロ分散波長でのファイバ伝播において高次の周波数モードまでの高いスクイージングが得られることを明らかにした。この理論解析に対応させて、波長800 nmフェムト秒レーザーパルスのファイバ伝播実験を行い、16x16の共分散行列を計測してシュミッドモードを抽出することにはじめて成功し、モード毎の光子数スクイージングを評価することに成功した。 一方、周波数モード間のクラスター状態の生成に関しては、エンタングルさせたい任意の独立したN個の周波数帯を決め,ファイバ入射パルスの周波数位相を最適化制御することによって,周波数モード間クラスター状態生成を行った.光源には石英ファイバの異常分散領域にあたる1550 nm波長帯のフェムト秒レーザー、および高非線形偏波保持フォトニック結晶ファイバのゼロ分散領域付近に中心波長をもつTi:Sapphireレーザを想定した.異常分散領域とゼロ分散領域それぞれにおいてN=4モードクラスター状態の数値解析を行い、ファイバ入射パルスのスペクトル位相を変化させることにより,4つのスペクトル帯それぞれをモードとしたあらゆる形状の4モードクラスター状態が達成されることを実証した。.
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