磁気光学効果であるファラデー効果を利用して光の逆進を防止する光アイソレーターは、基本光学素子の一つである。特にファイバーを用いた光学系では、アイソレーターの設置が欠かせない。これは戻り光が低損失で上流側へと伝搬して、光学ノイズや光学素子にレーザー損傷を与える原因となるためである。一般的には、1μm帯のレーザー用としては、TGG (Terbium gallium garnet)結晶が、1.5μm帯のレーザー用としては鉄系ガーネット薄膜が、それ以上の~3μm帯の中赤外レーザーではYIG(Yttrium iron garnet)単結晶がアイソレーターを構成する磁気光学材料として用いられている。 本課題では、上記材料よりも高性能な磁気光学材料によって光アイソレーターの大幅な小型化とファイバーへの直接結合を目指した研究を行った。特に、近年進展の著しい透明セラミックスについて検討を進めた。その結果、世界で初めてYIGセラミックス材料を実現し、磁気光学効果の測定を行った。磁気光学効果は、他の製造手法で作成されたYIG材料と一致して、セラミックス技術によって狙い通りの組成が得られていることが分かった。 結晶材料と比較し、残留複屈折の影響が低く、大型化が可能なため将来のコストダウン効果に優れているセラミックス技術を用いて、透明YIG材料を可能としたことで様々な可能性が広がる。YIG材料に三価のCeイオンを添加することでレーザー書き込みによるフォトニック構造が可能となる。本課題ではすでにCeイオン添加のYIG材料も実現しており、今後の研究の進展によってフォトニック構造で磁気光学効果を増大した、光アイソレーター材料を実現してく予定である。
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