研究課題/領域番号 |
15K13387
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
成瀬 誠 国立研究開発法人情報通信研究機構, 経営企画部・企画戦略室, プランニングマネージャー (20323529)
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研究分担者 |
金 成主 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, NIMS特別研究員 (30455456)
高橋 泰城 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (60374170)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 意思決定 / 単一光子 / 光システム |
研究実績の概要 |
意思決定問題は、情報通信技術の広範かつ重要な応用の根底にあり、機械学習・人工知能の基礎問題として熱心に研究されている。しかし、動的に変化する不確実な環境での意思決定とは、ベターな選択肢の探索と速やかな決断という難しいトレードオフを孕んだ「多本腕バンディット問題(Multi-armed bandit problem(MAB))」であり、その解決は容易ではない。本研究の目的は、単一光子の物理的性質を積極利用することにより、人工知能の時代における光及び光技術による新たな価値として、単一光子を用いた意思決定機能の可能性を示すことである。 本年度は、単一光子の波動性と粒子性を活用した独自の意思決定システムにおいて、選択肢増に対応出来るスケーラビリティを実現するアーキテクチャとして、階層型システムを提案し、ナノダイヤモンドによる単一光子源を用いた実証に世界で初めて成功した。具体的には、昨年度に実証に成功した偏光ビームスプリッタと波長板の制御による光意思決定方式を拡張し、偏光ビームスプリッタを階層的に配置し、4本腕バンディット問題の解決に成功した。階層型の光意思決定システムでは、「上の階層」と「下の階層」の意思決定が矛盾することがあり得るため、「最もよい選択肢」を得ることは容易ではない。本研究では、下階層から順に意思決定を行う「トーナメント」方式の有効性を確認した上で、単一光子の確率性をより積極的に用いれば、トーナメント方式を採用せずとも、最もよい選択肢を得ることができることを実証した。本成果はACS Photonics誌に掲載された。 また、単一のユーザーが選択肢を選ぶ「多本腕バンディット問題」を拡張し、ユーザーを複数とし選択肢の競合が生じる「競合的バンディット問題(Competitive MAB)」への原理拡張の検討に着手した。具体的にはもつれ光子の応用可能性の分析に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
単一光子を用いた意思決定について、階層型システムの実証に成功した。これを踏まえ、検討する理論モデルでは、より高次元の課題解決への進展を含め、想定以上の検討段階に進むことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
2年度までに実験研究が予想以上に大きく進展した。この結果を踏まえ、理論研究では競合的バンディット問題などの先進的取り組みを強化する。また、実験結果を踏まえ、理論に対する実現技術の物理限界や技術限界の制約の反映を検討する。
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