研究課題/領域番号 |
15K13392
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
平田 孝道 東京都市大学, 工学部, 教授 (80260420)
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研究分担者 |
高宮 真 東京大学, 大規模集積システム設計教育研究センター, 准教授 (20419261)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大気圧プラズマ源 / 化学修飾CNT / 立体ナノ構造構築 / 細胞刺激発生装置 / 脳神経細胞再生 |
研究実績の概要 |
今年度は、デバイスの埋め込みを想定した生物学的実験を行った。埋め込み対象デバイスとしては、シリコーン樹脂(PDMS:ポリジメチルシロキサン)にてコーティング処理を施したワイヤレス電力電送用フレキシブル基板(縦:78mm、横:54mm)を用いた。埋め込み実験には、2匹のラット(未処理:1匹、デバイス埋め込み:1匹)を用いた。ただし、実験条件を統一するため、未処理ラットにもデバイス埋め込みラットと同じ大きさに皮膚の切開を施した。 デバイス埋め込み期間が14日間であったが、デバイス内への体液浸潤、体動によるデバイスの破損などがなく、LEDの点灯が定常的に確認できたことから、回路には問題が無いことが判明した。ラットの皮下組織とデバイスの間にはコラーゲン繊維性結合組織膜(生体特有の「カプセル化」現象)が形成されて体液が溜まっているのが確認された。この理由としては、ラットの体動に起因したデバイスの“ずれ”によって空洞が形成されて体液が溜まったものと考えられる。 さらに、炎症反応の有無を確認するため、血液中白血球値の測定を行った。一般的にラットの白血球値は67~216 (×100/μL)であり、216 (×100/μL)を超えた場合には炎症反応があるといえる。埋め込み5日目及び6日目で数値が上昇したことから、デバイスを異物と認知した可能性があるものと考えられる。ただし、白血球値:216 (×100/μL)を越えなかったが、炎症反応の初期段階であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体的な到達度に関しては、70~80%程度であり、やや遅れている。 細胞刺激発生装置に関しては、外部からの電力供給を行うための電力伝送回路がほぼ完成しているものの、体内埋め込みを想定した被覆に関する試作検討を行った結果、防水などに不具合が生じる場合があるために改良が必要である。更に、“足場”となるCNTにつ いても、立体構造構築に関するプロセスがようやく完成したため、今後実験を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
チームⅠ~Ⅲの結果を集約し、総合的評価を行う。具体的には、前年度までの内容を基に、製作した装置をCO2-インキュベーター内の培養容器に設置した状態での細胞培養実験並びに小動物を用いた生体組織への埋め込み実験を行う。埋め込み対象とする動物は、ラットである。各チームにおける検討項目及び到達目標は、以下の通りである。 [チームⅠ]→前年度のプラズマ照射実験を継続して行いながら、培養細胞及びラットへのプラズマ照射を行う。ここで、ラットの照射部位は脳辺部とし、頭蓋骨下の脳表層部を中心に照射処理を行う。特に、複数箇所にプラズマを照射した場合の細胞増殖変化に注目した観察を行い、装置と細胞が高効率で重層(融合)するための条件を見出す。⇒ 平田、学生 [チームⅡ]→前年度のネットワーク形成に関する基礎実験を継続して行い、立体構造による細胞の垂直方向への伸長を促進させるための構造最適値を把握する。ラットの実験についても同様の基礎実験を行い、生体組織における立体構造の有無を組織病理検査などにより評価する。⇒ 平田、学生 [チームⅢ]→外部給電コイルより装置に電源を供給しながら細胞培養及び動物埋め込み実験を行う。この場合、長時間の培養にて生じると想定される複数の要因について評価を行い、装置の機能向上に関する総合的評価を行う。⇒ 高宮、学生
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次年度使用額が生じた理由 |
生体適合性材料が想定金額よりも高額にであったために次年度に見送ることにした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に生体適合性材料の購入に充当する予定である。
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