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2015 年度 実施状況報告書

準結晶パターンによるX線集光素子に関する基礎研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K13397
研究機関筑波大学

研究代表者

伊藤 雅英  筑波大学, 数理物質系, 教授 (30150874)

研究分担者 青木 貞雄  筑波大学, 名誉教授 (50016804)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード電磁場解析 / 準結晶 / X線集光 / 回折限界
研究実績の概要

結像光学系において開口数が非常に大きい場合,スカラー近似が成立しなくなることが知られている。さらに,光学系内にきわめて微小な開口などの構造が存在する場合,スカラー近似では表せない光の偏光状態や材料による電磁場の境界条件の効果によって誤差はさらに大きくなる。このような場合の光伝搬は. Maxwell の方程式に立ち戻り,光をベクトル変数である電磁場として数値解析する必要がある。集光素子の3次元での電場分布を計算することで、素子に空ける穴の大きさ・数、穴の間隔を設計し、X線用準結晶集光素子を作成する。3次元での膨大な電場分布の計算をこなすことが大きな問題である。
そこで、短い時間で、散乱角度の大きい電場分布を3次元計算する手法を案出した。さらに、従来手法のフラウンホーファー近似と比較することで、X線の集光の実験に、必要である長い距離での計算の妥当性を確認した。
この計算手法を用いて、光軸上の強度を計算し、集光効率を計算した。さらに、集光距離、集光の径、集光強度を計算し準結晶集光素子を設計した。
設計指針として下記が得られた。1)集光素子の穴の間隔ほぼ2乗に比例して、集光距離が長くなる。2)穴のサイズが大きいほど、輝度は強くなるが、集光径も大きくなる。3)穴の数が多いほど、集光径が小さくなる。また、集光の原理については、一般に、光軸上で位相の強めあうところに集光点が来るとされている。しかし、最も集光強度の強いところで、位相の強めあう効果は1割程度であった。したがって、少なくとも、準結晶光学素子は位相を強めあう効率は低いといえる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

集光の電場分布を計算するプログラムを作成し、集光素子の設計を行った。一方、集光素子の製作やその評価に向けた取り組みは、まだ、考案段階にある。また、具体的な集光素子の材質や穴の奥行きを評価した計算は今後行う。
集光素子作成に向けて、作成可能な大きなで、かつ、集光距離を長くできるような設計を検討した。また、X線で使える数十nmレベルの穴を数百個きれいにあける方法を、筑波大学およびNIMSの専門家に相談して検討している。
実際の素子の製作のための、露光・現像の条件だしに時間がかかると思われる。微細加工に有益な、金属をドライエッチングするための機械が大学設備にはないため、見通しを立てるのに時間がかかっている。
計算手法としては、1)境界要素法、2)厳密結合波解析法、3)キルヒホッフ―フレネル回折積分、4)フラウンホーファー近似を検討した。手法1)2)は材質や穴の奥行きを考慮できるが3)と4)はできない。一方、計算速度は手法3)4)の方が速く、メモリも少なくて済むため3次元の計算が容易にできる。手法3)4)については、プログラムの作成・シミュレーションを行うことができた。手法2)については、二次元で、材質等を考慮して電場分布を計算できることを確認した。3次元の計算では、1)2)の方式は計算時間やメモリの制約からそのままでは適用できない。
X線の実験の前に、可視光で散乱光を計測することで、集光素子の設計の妥当性を確認できる。この確認用のCCDカメラによる撮像光学系と計測プログラムを準備した。

今後の研究の推進方策

計算手法としては、検討中の1)境界要素法、2)厳密結合波解析法、3)キルヒホッフ―フレネル回折積分、4)フラウンホーファー近似の内、手法3)4)を中心に検討を行う。今のところ、材質や穴の深さの影響を検討できていないが、手法2)を補助的に用いることで、これらを考慮する。
厳密結合波解析法は、境界要素法と並んで、微細形状の散乱光の計算に使われる手法で、光波をベクトルとして扱うため、偏光が自然に考慮される。また、屈折率分布を与えるだけで、計算ができるので、プログラム作成や検証にかける時間が少なくて済む。一般に、この解析法は周期的構造にしか適用できないが、本研究室では、孤立した形状にも適用する手法の開発を進めている。また、計算時間やメモリを大量に使用するという問題があるが、準結晶集光素子が円形開口だけで、設計可能なため、円の対称性を利用して二次元の計算で済ますことを計画している。
確実に、光学素子を製作するため、ナノホールアレイの作成方法としては、FIBおよび電子線描画の両面で検討を進める。筑波大学およびNIMSは、国のプロジェクトであるナノテクノロジープラットフォームとして、微細加工プラットフォームを形成しており、そのプラットフォーム上で作成を進める。課題番号(F-15-BA-32)を得て、支援いただいている。

次年度使用額が生じた理由

光学素子の設計を終えた段階であり、試作は次年度以降に行う予定のため、27年度は物品費を抑制して次年度使用に充てた。

次年度使用額の使用計画

集光素子製作費として280千円。内訳は、電子線描画(3千円×60時間:180千円)、電子顕微鏡観察(1.5千円×20時間:30千円)、電子線蒸着(1.08千円×20時間:21.6千円)、金属ドライエッチング(2.3千円×20時間:46千円)。
学会発表旅費、参加費、および、論文発表費、実験補助員費など。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Cross-sectional shape evaluation of a particle by scatterometry2016

    • 著者名/発表者名
      T. Hoshino and M. Itoh
    • 雑誌名

      Opt. Commun.

      巻: 359 ページ: 240-244

    • DOI

      10.1016/j.optcom.2015.09.063

    • 査読あり
  • [学会発表] X線用準結晶集光素子の設計2016

    • 著者名/発表者名
      深水 嵩明、李 維率、星野 鉄哉、杉坂 純一郎、渡辺 紀生、青木 貞雄 、伊藤 雅英
    • 学会等名
      第63回応用物理学会春季学術講演会
    • 発表場所
      東京工業大学 大岡山キャンパス(東京都目黒区)
    • 年月日
      2016-03-19 – 2016-03-22

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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