研究実績の概要 |
強磁性や強誘電性, 強弾性などの性質を複数有する物質系を一般にマルチフェロイックと呼ぶ。近年, 磁界によって電気分極が変化したり, 電界によって磁化の向きが変わる現象は, 基礎物性分野だけでなくデバイス開発の分野でも世界的に研究が行われている。さらに強弾性体については, 応力で強誘電分域だけでなく磁区構造も制御できれば, マルチフェロイックの3つ目の外力パラメータとして興味深い。 本研究では, 低温下で電界や応力を試料にかけ, 誘起される構造相転移や磁気相転移を観測するだけでなく, その外力の大きさとともに強誘電分域や磁区が変化する様子を可視化できる複屈折イメージング装置を開発することを目標とした。 今年度は主に(1)複屈折イメージング装置の自動解析システムの開発と, (2)電界中における複屈折測定が行える装置開発を行った。解析システムの開発では, 試料の位置補正を1ピクセルの精度で行ったあと, 全11万ピクセルの画像情報から1ピクセル毎に入射光と出射光の8個のストークスパラメータを抽出することで, 複屈折の定量解析を行うプログラムを開発した。その結果, 1時間当たり数千枚のイメージング画像の解析が可能となったため, 1枚のイメージング画像を小さなエリアで分割して解析することもストレス無くできるようになった。 一方, 電界中の測定装置の開発では, 高い絶縁性と大きな熱伝導率を併せ持つ窒化アルミニウム製試料フォルダを作製した。4mmの電極間に2kVの高電圧を印加しながら, 複屈折イメージング画像が取得できる測定システムを構築した。LiNbO3結晶を用いたポッケルス効果を測定した結果, 電圧の1次に比例して複屈折が増大する様子が観測できた。この結果より得られた電気光学定数はLiNbO3結晶の代表値と一致した。
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