近年、インジウムとケイ素の相互作用によって発現する触媒が発見された。そこで我々は、ケイ素を含有するゼオライトにインジウムを注入(担持)することによりインジウムとケイ素の相互作用を引き起こし、触媒作用を発現させる研究に取り組んでいる。ゼオライトは細孔構造を持ち内部比表面積が極めて大きいため、インジウムを担持したゼオライトにおいて触媒能を発現させることができれば、触媒効率の向上などが期待できる。 本研究では、アークプラズマ装置によりインジウムナノ粒子を生成し、これをゼオライトへ照射し、インジウムをゼオライトに担持する研究に取り組んだ。インジウムナノ粒子の照射の際には、粉体のゼオライトを機械的に攪拌している。そのため、インジウムをサンプル全体にほぼ均一に担持させることができた。本年度は、アークプラズマ装置のコンデンサーの容量を変えることにより、サンプル上でのインジウムがどのように変化するか(粒のサイズ、担持量、など)を詳細に調べた。コンデンサーは、1080uFと360uFの2種類とした。はじめに、作成した2つのサンプルの表面状態を透過型電子顕微鏡(TEM)により調べようとしたが、TEMの強い電子線でサンプルの表面形状が変化してしまうことがわかった。そこで、電子線のエネルギーを800Vに下げて、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定した。その結果、1080uFの場合、360uFよりもサンプル上のインジウムナノ粒子のサイズが大きいことがわかった。最後に、これらのサンプルの触媒活性を調査した。サンプル中のインジウム量は、ともに質量比で0.4wt%とした。分析の結果、どちらのサンプルでもFriedel Crafts alkylation反応の反応効率は約80%であった。この結果、コンデンサー容量(およびインジウムナノ粒子のサイズ)は触媒効率にほとんど影響しないことが明らかになった。
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