研究課題/領域番号 |
15K13409
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
櫻井 誠 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90170646)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多価イオン / 量子ビット / 単一イオン注入 / STM |
研究実績の概要 |
イオンを固体表面に1個1個打ち込む、いわゆる単一イオン注入(Single Ion Implantation, SII)技術を、入射イオンとして多価イオンを用いる方法として確立し、SIIにより多価イオンを半導体などの表面に打ち込み、埋め込まれた原子の保有する量子状態を量子ビットとして利用することの可能性を探索する。 多価イオンを用いると、SIIによる量子ビット作成において従来困難とされた、イオン1個が入射した事象を100%の確度で検知することが可能となり、本研究により、多数の量子ビットを配列させる必要がある実用的な量子コンピュータの開発に大きく寄与すると期待される。 本年度はSTM用に製作されたピエゾアクチュエーターを購入し、これをXYの2次元方向に移動可能な超音波モーターで駆動される粗動機構の上に取り付け、イオン入射位置制御の機能を持たせた装置を製作した。 ピエゾアクチュエーターの駆動には既存のSTM制御用コントローラを用いた。ピエゾアクチュエーターの他端には電解研磨で製作したタングステンチップを取り付け、対向する位置に作動マイクロメーターと積層ピエゾアクチュエーターでアプローチ機能を持たせた試料ステージを設置しSTMを構成した。粗動機構とピエゾアクチュエーターは将来イオンビーム照射時のビーム経路を確保するための空間を設けている。 製作した粗動機構とピエゾアクチュエーターの動作は、それぞれレーザー干渉変位計とグラファイト表面のSTM像の観察で評価し、良好に動作することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に必要なイオンの入射位置制御機構について、ピエゾアクチュエーターを用いたSTM観測装置の原理による制御装置を製作し良好に動作することが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目標である単一イオン注入、すなわちイオンを1個ずつ試料表面に入射させるためには、1個のイオンの入射が確実に検知できなければならない。また、イオンが試料に入射していないときには入射を知らせる信号が発生してはならない。多価イオンが試料に入射したときに発生する大量の2次電子を計測して、入射を知らせる信号とするが、多価イオンが試料以外の場所に入射したときに発生する2次電子により、この信号が誤って発生しないような工夫を施す。具体的な対策としては、あらかじめ軌道計算シミュレーションを行い、試料に対するマスクやカンチレバーの電位を最適化ことにより、試料以外の場所で発生する二次電子のエネルギーと試料で発生する電子のエネルギーに差を持たせて、試料から発生した二次電子のみが検出器に到達し、それ以外の場所で発生した二次電子は検出器に到達しないように工夫する。また、マスクの直前に静電レンズを設けて、イオンビームを試料上で収束させる。本資金の範囲で単一イオン注入を実現させるには困難が予想されるが、成功に近づける努力をしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額分は2016年3月初旬に取引したが、法人カードによる決済のため、当該年度中に使用できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年3月初旬に取引した分は2016年度に入って支払った。
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