研究課題/領域番号 |
15K13411
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研究機関 | 埼玉工業大学 |
研究代表者 |
内田 正哉 埼玉工業大学, 付置研究所, 教授 (80462662)
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研究分担者 |
酒井 卓郎 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 物質科学研究センター, 研究主幹 (70370400)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中性子線 / 粒子線 / 量子ビーム / 陽子ビーム / 軌道角運動量 / 波動関数 / ボルテックス(位相特異点) / 中性子回折 |
研究実績の概要 |
本研究では、波動関数 (位相) の制御による軌道角運動量をもつ中性子ボルテックスビームの生成を試みることを目的に研究を遂行している。平成28年度の主な成果は、以下の通りである。
1.軌道角運動量をもつ中性子ボルテックスビーム生成するために、当初計画のフォーク型回折格子に加え、新しい形状の回折スリットの設計およびシミュレーションを含む詳細な理論的検討を行った。新しい回折スリットの研究を進めたのは、当初計画のフォーク型回折格子の作製が陽子マイクロビームによる超微細加工技術を用いても極めて困難であること、われわれ研究グループによる電子ビームを用いた多角形スリットを用いた場合の研究の進展により(Microscopy、印刷中)、多角形スリット等を用いた場合でも軌道角運動量をもつ電子ビームが生成されることを見出したことによるものである。特に多角形スリット(3、5、6角形)のの場合を詳細に検討した。 2.設計に基づき、実際に(国研)量子科学技術研究開発機構の陽子マイクロビームを用いてフォーク型回折格子の作製を行った。フォーク型回折格子大きさは、当初計画のサイズの他、1.5倍、2倍サイズの作製も行った。1.5倍、2倍サイズの回折格子は、エッチングおよび形状結果も良好であったが、計画サイズのものに対してはエッチングが難しく完成にまで到達していない。作製したフォーク型回折格子に対し、光学顕微鏡・走査型電子顕微鏡(SEM)による評価、およびガドリ二ウム(Gd)含有量の測定を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度、主に2つの課題に取り組んだ。そのうち、1)の中性子ボルテックスビーム生成用の光学素子の設計シミュレーションについては、当初計画のフォーク型回折格子のものに加え、新たな回折スリットによる方法の検討を行った。これは今後の研究目標到達への大変大きな一歩となる。一方、2)陽子マイクロビームを用いて回折格子作製を試みているが、中性子回折実験が実施できるまでのサイズ、完成度の高いフォーク型回折格子はできていない。これは加速器の不具合により陽子マイクロビーム実験のマシンタイムが少なくなったことが一因であるが、そのため、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
世界で初めてとなる中性子ボルテックスビームの生成を目指していたが、米国グループにより位相板を使う方法ではあるが先を越された(Clark et al., Nature, 2015)。今後は、陽子マイクロビームを用いた回折格子の完成を目指し開発研究を加速させる。当初計画のフォーク型回折格子作製のネックとなっているアスペクト比の大きな試料のエッチングに対し高周波超音波洗浄、集束イオンビームによる方法を取り入れ開発を進める予定である。多角形スリット等、フォーク回折格子以外の方法による中性子ボルテックスビーム生成方法も実施する。また作製した回折格子に対して中性子回折実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額が生じた理由は、「特殊回折格子」の作製が完成しておらず、それに伴い「中性子ビーム用検出器部品」の購入、執行が遅れている事によるものである。
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次年度使用額の使用計画 |
執行計画は以下のとおりである。 「中性子ビーム用検出器部品」に係る器材の購入を予定している。また、量子科学技術研究開発機構、日本原子力開発機構、J-PARKでの実験、打ち合わせのための旅費での使用を予定している。
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