中性子が大きさの揃った物質と散乱する場合、中性子波の干渉によりその散乱断面積が増加する。この干渉性散乱を利用した中性子反射材料としてダイヤモンドナノ結晶(DNP)が現在注目されている。ダイヤモンドは3.5 g/cm3とグラファイトの2.2 g/cm3と比べ非常に高い密度を持ち、原子核数密度という意味でもあらゆる物質の中で最大である。直径3~50 nmといったナノサイズのダイヤモンドは超精密研磨低砥粒や樹脂・セラミックスなどの強化成分といった工業用途に開発されており、粒径の揃った純度の高いものが近年安価に入手できるようになり、中性子反射材の材料として現実的に利用できるようになっている。 本研究では2016年度に市販で購入したダイヤモンドナノ結晶の粉末を150-300MPaで加圧し、1.1g/cm3と2倍以上の密度を得ることに成功し、その微分断面積の測定をJ-PARC BL21(NOVA)で行っている。NOVAには上流、下流に2台のGEM検出器が実装されており、透過率により全断面積を測定できる。この全断面積の測定および散乱検出器バンクでの測定値を比較し無矛盾な値を得た。 2017年度はその中性子散乱断面積の運動量移行分布から粒径分布を導出する解析を行った。非干渉性散乱との比較を行うことにより、干渉性散乱は半径2.5 nmの粒子による影響が大きく、また全体の1/2程度が干渉性散乱に寄与していないということがわかった。観測された粒径分布を透過型顕微鏡画像(TEM)と比較した。結果、実際に得られた干渉のサイズはTEM像から得られた粒径よりも小さいことがわかった。実際のDNP粒径と干渉性散乱のサイズは必ずしも一致していない可能性が示唆される結果となった。
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