電子バンチの空間電荷分布を有機ポッケルス電気光学効果 (EO) 結晶を用いた EO サンプリングにより、加速器真空系の外で非破壊・リアルタイムでの計測を実現する測定系の開発を実施した。 計測対象の電子バンチ長は数十フェムト秒 (FWHM) である。測定系を真空系の外に導く理由は、有機物を含む測定系を電子ビーム軌道から可能な限り離し、空間線量の低い場所に設置することにより、測定系を放射線損傷から保護するためである。真空ダクトにメタマテリアル層を蒸着したプリズムをクレッチマン配置で設置し、電子バンチ起因のクーロン場で表面プラズモン励起 (SPR) を励起させ、これを EO 計測するものである。製作上の制限から、合成石英薄板にメタマテリアル層を蒸着した SPR 基板を製作し、この基板とプリズムをオプティカル接合させた。 SPR 基板の構造は、実証試験を行う加速器の運転条件を課した数値計算 (CST STUDIO) で SPR 強度が最大となる様に最適化し、 2015 年 12 月と 2016 年 1 月に、京大ナノハブでリフトオフ法により試作した。基板のメタマテリアル層を三次元レーザー顕微鏡で観察し、パターンの寸法・表面粗さの評価を行った。パターンのスリット間隔は凹部が設計に比べて 3% 程度狭く、深さは 10% 浅い結果となった (いずれも代表値)。また表面粗さは ±5 nm である一方、レーザー顕微鏡の繰り返し精度も ±6 nm と大きく、現時点ではパターン設計寸法の一割程度が加工・計測精度となっているのが実情である。 実証試験については、SPring-8/SACLA 附設の RF フォトカソード電子銃試験加速器で行う。2016 年 10 月以降に実施する予定であったが、加速器及びレーザー光源の増強工事と制御系の整備が予定よりも大幅に遅れ、2017 年 12 月以降を予定している。
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