研究課題/領域番号 |
15K13416
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺田 賢二郎 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (40282678)
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研究分担者 |
堤 成一郎 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (70344702)
村松 眞由 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (20609036)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | モデル化 / マルチスケール解析 / 土木材料 / 機械材料・材料力学 / 計算物理 |
研究実績の概要 |
研究動向調査と並行して、多重物理・時空間マルチスケール問題の定式化とき裂進展/濃度拡散の個別の解析手法を整備した。具体的には、以下の3つの研究項目を実施した。
A:国際ジャーナル等に掲載された関連研究の文献調査と並行して、学術研究発表会に参加し、時空間マルチスケールモデリングに関する先行研究あるいは類似研究を調査し、既往研究の有無と最新の研究動向を把握した。 B:申請者が近年提唱してきた「数値材料試験」の考え方を踏襲して、速い・遅い速度とミクロ・マクロ空間変数との関係の定式化に注力する。この定式化は、次のような次元解析に基づいてスケーリングパラメータを定義し、時間と空間のそれぞれのミクロおよびマクロ領域での支配方程式を記述した。具体的には、多結晶構造の実寸法を微視的(ミクロ)寸法、圧力容器や鋼板などの実寸法を巨視的(マクロ)寸法、多結晶体内のき裂進展に要する時間をミクロ時間、マクロ構造の供用時間のスケールをマクロ時間として定義するとともに、ミクロ速度vとマクロ速度Vを導入して化学種の濃度流束やき裂進展速度を記述した。 C:申請者がこれまで開発してきた、(a) 結晶塑性構成則、(b) 修正結合力クラックモデル、(c) 有限被覆き裂進展解析法を組み合わせて、多結晶構造内の任意き裂進展解析手法を定式化し、プログラム実装した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
任意き裂進展解析手法に塑性変形の影響を加味できていないため。
また、化学物理連成現象とそれに伴う非定常な物性変化を予測しうる数値シミュレーション手法が整備できなかった。特に、腐食の電気化学反応により電子と各種イオンが生成・消失することで濃度流束と電流が生じ、イオン濃度と電場が決定されるという、一連の電気化学連成現象の数理モデルの定式化が叶わず、有限要素解析プログラムへの実装まで出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
実寸法の多結晶構造を代表体積要素として、[P1]を用いたミクロき裂進展解析を実施する。この際、マクロ応力場を代表体積要素の境界に負荷するが、多結晶構造の非均質性を反映してき裂進展経路は任意の方向性を示す。これを空間的に平均化(積分平均など)して方向を定めると同時に、ミクロなき裂進展速度も時間的な平均を取ってマクロ速度を算定する。そして、昨年度に研究項目Bで定式化した関係式およびスケーリングパラメータにしたがって時空間の平均挙動をスケールアップにより算定し、マクロのき裂進展則およびその破壊力学を同定する方法を提示する。本研究では、これを「数値ミクロき裂進展試験法」と呼び、前年度の遅れを取り戻すべく、研究を加速させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
1. H27年度の進捗状況として、定式化上で塑性変形の影響を考慮したマルチスケールき裂進展のモデルの開発が遅れたため、その数値シミュレーションおよび可視化を行うためのパソコンおよびストレージ装置の導入を急ぐ必要がなかったため。 2. H27年度は、化学物理連成現象とそれに伴う非定常な物性変化を予測しうる数値シミュレーション手法の整備までは着手できなかったため、大学院生への謝金として確保してあった予算を消化できなかっため。
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次年度使用額の使用計画 |
塑性変形の影響を考慮したマルチスケールき裂進展のモデルを定式化し、その数値シミュレーションおよび可視化を行うためのパソコンおよびストレージ装置を購入する.また、化学物理連成現象とそれに伴う非定常な物性変化を予測しうる数値シミュレーション手法の整備を整備し、これに携わった大学院生へに対して謝金として支払う。
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