研究課題/領域番号 |
15K13417
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
榎本 剛 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10358765)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ルジャンドル陪関数 / フーリエ級数展開 / ガンマ函数 / 拡張浮動小数点数 |
研究実績の概要 |
球面展開に用いられるルジャンドル陪函数に関し,高階高次に適用可能な計算手法について精度を詳細に比較した。通常用いられる倍精度の3点漸化式を用いた手法では,1000を超える切断波数から精度が単精度程度まで低下し,およそ1700以上では精度が不十分であるためにルジャンドル変換が破綻する。精度低下の原因は,極付近で小さい余緯度の正弦が扇形ルジャンドル陪函数の漸化式において繰り返し乗じられるために生ずるアンダーフローである。単に4倍精度を用いるのは,問題の先送りに過ぎない上,計算時間が桁違いに遅い。高階高次に適用可能な計算手法として,倍精度の4点漸化式を用いたフーリエ法と拡張精度浮動小数点数(X数)の3点漸化式を用いた手法とがある。 扇形ルジャンドル陪函数を用いないフーリエ法はアンダーフローが生じない優れた手法であるが,切断波数5000~1000で誤差が次数の3乗に比例して急増することが判明した。フーリエ法を再検討したところ,原因はルジャンドル多項式のフーリエ級数展開の係数の計算方法にあることが分った。高次において,フーリエ級数展開の係数をガンマ函数の漸近式を利用したものにしたところ,次数の平方根に比例する誤差に抑制することに成功した。 改良されたフーリエ法とX数法とを精度と速度の観点から比較した。まず,各波数の振幅1が逆変換・順変換ののちに復元されるかというテストでは,切断波数10239を用いた場合フーリエ法の誤差がX数法の約半分であった。また完全正規化されたルジャンドル陪函数のすべての波数の和が切断波数+1の2乗になるという恒等式からの誤差を調べたところ,フーリエ法がX数法と比較して2桁程度精度が高く,フーリエ法の誤差は緯度に依存しないのに対し,X数法の誤差は極付近で増大することが分った。以上から精度の点ではフーリエ法が有利であると結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高速球面調和函数変換のアルゴリズムについて調査し,これを応用する場合の課題について検討した。検討の過程でルジャンドル陪函数の計算精度がその計算手法に依存することを改めて認識し,モデルの作成に優先して高階高次の場合の精度に関する調査を行うことにした。当初予定したモデルは完成していないが,ルジャンドル陪函数の数値計算法について高階高次の場合に精度を担保する重要な成果が得られたため,全体として順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに提案されている高速球面調和函数変換法は,計算の一部で数値不安定を生ずるおそれのある部分があり,スケーリングする方法で回避している。平成27年度の成果を生かし,高階高次でも安定して高速球面調和函数変換が行えるようにアルゴリズムの改良を図る必要がある。
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