本年度はHdiv内積を用いたMaxwell方程式のEFIEの不連続Galerkin法の研究に本格的に取り組んだ.まず,三角形の各頂点に2自由度を有する線形要素を使用し,不連続Galerkin法を定式化した.定式化には,従来法との親和性を考慮し,ペナルティー項に対応する不連続性が解消した状況で,従来のモーメント法に類似の定式化となるように工夫した.まず表面divergenceの項のない状態で,球状の散乱体を用いて解析精度を確認した結果,従来法よりも高精度の数値計算が実行可能であることが分かった.次に,表面divergenceの項を加えて数値計算を行ったところ,極端な低周波問題以外では良好な数値結果が得られることが分かった.さらに得られた解法を低周波問題に適用してみたところ,線形方程式の反復解法の収束性に問題を生ずることが分かった.この原因を探るために,係数行列の固有値計算を行ったところ,3角形要素数と同数のほとんど0の固有値があることが判明した.これは試験関数に要素の表面divergenceを0とし,対応する要素境界での法線方向の連続性,及び要素の表面curlを0として得られる空間の次元と一致し,この空間に属する試験関数が,超低周波において積分方程式の値域の空間にほぼ直交する事が原因と考えられる.この問題を解決するためには,試験関数の不連続項に関わるペナルティー項の導入が有力であることが結論された.以上のように新しい不連続Galerkin法を定式化して超低周波問題以外では精度の向上に関する一定の成果を得ることができたが,低周波破綻の完全な解消は今後の課題となった.
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