線型代数群のベクトル空間への作用の極限については,プッチャ,レッナーなどによる線型代数半群の理論が存在し,線型代数群の理論に準じた理論が構築されている。しかし,極限を考察するからにはコンパクト化した状況を考察するべきである。そうした背景の下,本研究課題の目的は線型代数半群の理論のコンパクト化した状況での基礎理論の構築である。
平成29年度までに一般次元の射影空間上の線形変換の極限全体からなる半群PM(V)を定義し,その具体的な記述や,コンパクト性を始めとするその位相的ないくつかの性質が得られ,さらに半群としての性質,並びに,Neretin氏によるHingeの理論との関連も含め,「Projective linear monoids and hinges」というタイトルの論文にまとめ,arXivにアップロードした。これにより、射影一般線型群が射影空間に自然表現として作用する場合に関しては、本研究課題の目的の第1段階をクリアしたと言って良いかと思う。
平成30年度では,PM(V)の冪等元に関して一定の成果を得た:PM(V)のhingeに対応する元がunit regularであることを示した。即ち,hingeに対応する任意の元Aに対し,A gA=AとなるPGL(V)の元gが存在する。さらに,hingeに対応する任意の冪等元Aに対し,Aの或る共役元が或る分割に対応する対角冪等元になることを示した。特にPM(V)のhingeに対応する元全体のPGL(V)×PGL(V)軌道の個数は有限である。一方,一般のPM(V)の元Aに対しては,(gA)^3=(gA)^2 なるPGL(V)の元gが存在することを示した。
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