研究実績の概要 |
指数が1/2,...,1/2;1,...1のn次超幾何関数を周期積分に持つ射影直線上の数論的n次元Calabi-Yau多様体族X_nを構成した。この多様体族は、射影直線の0, 1, ∞で退化する。26年度までの研究で、0での退化を利用して一般ファイバーに対するBetti, de Rham, エタール, p進の各実現に対する相対コホモロジーを決定し、コホモロジー類がn次超幾何局所系と代数的サイクルにより生成されるなどの成果をえていた。 この研究の目的は、今までに構成したCalabi-Yau多様体族X_nに対して、数論における未解決問題を具体的に検証して、これらの予想の本質的な解決にむけた一歩を踏み出すことである。高次元の多様体で非自明かつ計算可能な多様体や多様体族は多くは知られていない。ここでの実験的考察は、様々な予想の理解につながる。 27年度の研究では、3次元の場合のこの多様体族の特異ファイバーの半安定的なモデルを具体的に構成して、そこに現れる有理数体上の剛性Calabi-Yau多様体の保型性とその上の代数的サイクルに関する結果を得た。保型性に関しては、保型多様体との代数対応を構成することで、得られた剛性Calabi-Yau多様体の中間次元のモチーフに対応するL関数が重さ4・レベル16の保型形式のL関数になることを得た。さらに、この剛性Calabi-Yau多様体族上の代数的サイクルを具体的に構成して、高次chern類写像の全射性(Beilinson-Tate予想)を確かめた。また、対応するL関数のs=2で零点を持たない事実に関して、代数的サイクルに関する予想と矛盾しないことを確認した。 これらの結果は、研究集会「レギュレーター in ニセコ 2015」およびパリ第7大学(フランス)における整数論セミナーで発表した。
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