平成30年度は、一般超幾何カラビ・ヤウ多様体族の2進モデルと、滑らかな射影多様体上の代数曲線族に関してこれまでの研究を発展させ、以下の成果を得た。 (1) 一般超幾何カラビ・ヤウ多様体族の2進モデルについて考察し、相対2次元以下の場合に完備で滑らかなモデルを構成することできた。完備滑らかなモデルを特殊化することで、ある実2次体上のK3曲面で至るところ良い還元を持つものを構成できた。一般の次元のアフィン・モデルは、2次円分被覆型の方程式をArtin-Screier型の被覆に替える変換を施すことで得られ、中間次元の局所系として一般Kloosterman和に付随する局所系が現れる。完備なモデルは、アフィン・モデルを、2が可逆な場合のブローアップによる構成の返還版を行って得る。相対3次元以上の場合は特異点が存在するので、考察すべきモデルの特異性を含めて今後の課題である。 (2) F-isocrystalの各点でのFrobeniusのNewton多角形が常に一定となる滑らかな射影多様体上の代数曲線族がisotrivialであることを証明する際には、Tamagawa-Saidiの変形理論の一般化が必要になる。古典的な結果であるArtinらによる局所的な変形理論を応用することでそれが可能になる。これらの結果を、2018年6月にチュアン・チャウ(ベトナム)にて開催されたシンポジウム「Arithmetic and geometry of local and global fields」において、"On variation of Newton polygons of F-isocrystals and its application"といタイトルにて講演して、F-isocrystalの各点でのFrobeniusのNewton多角形の変動について予想される全体像の解説を行った。
|