研究課題/領域番号 |
15K13423
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石田 正典 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30124548)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | トーリック多様体 / カスプ特異点 / スキーム理論 / 形式スキーム / 形式扇 / 代数多様体 |
研究実績の概要 |
トーリック多様体は実空間の有理的な凸錐体の集まりである扇により記述できる正規代数多様体である.しかし,それを離散群の作用で割ってできる多様体やそれから得られるカスプ特異点を記述するには不十分であり扇の概念の拡張が必要である.それを実行するため,代表者が以前カスプ特異点のゼータ零値の有理性を示すために導入した「T 複体」の概念を拡張して形式扇の理論を整備したい.代数多様体の理論の基礎付けであるグロタンディークのスキーム理論に形式スキームが定義されているように,トーリック多様体を記述する扇を一般化して形式扇を導入して理論を整備し,カスプ特異点などの研究に役立てるのが研究目標である.初年度は形式扇の定義は自然に形式スキームあるいはスタックが対応するよう慎重に行った. トーリック型カスプ特異点は土橋宏康による 1983 年の論文で導入されたものであるが,最近土橋により鏡映変換で生成される群によるカスプ特異点の例が 3 次元や 4 次元で多く与えられている.カスプ特異点を記述する形式扇は強凸有理凸多面錐を含む空間を対象とする圏の部分圏として定義するのが適当であるが,これまではある対象の自己同型は錐の各点を固定するものを考えてきたが,土橋による新しい例を記述するには錐の自明でない自己同型を引き起こすものも考える必要があることがわかった.また,ビンバーグによる線形鏡映群の理論と関係が深いものとして,多面錐を含む空間の写像は恒等写像だけを考える固定形式扇を定義して理論整備を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
このカスプ特異点について,準多面凸集合と鏡映群の方向から研究している.初年度は土橋宏康氏などの研究者と東北大学数学教室内で週 1 回セミナーを行い,互いに得られた結果を報告し合い研究を進めた.トーリック型カスプ特異点を記述する形式扇について妥当な定義について考えているが,土橋により得られたさまざまなトーリック型カスプ特異点の例により,形式扇の定義についても形が定まりつつある.特に,固定形式扇について,これが適当な条件を満たす正の支持関数をもつ場合に扇として実現できることを示した. 2015年 11月には福岡大学の佐藤拓氏と研究集会「杜の都代数幾何研究集会@福岡」を福岡大学セミナーハウスで開催し,国内の関係する研究者の研究結果を知り,研究に役立てることができた.本研究の代表者もこの研究集会で「固定形式扇とトーリック型カスプ特異点」の題でこれまでの研究成果を発表した.
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今後の研究の推進方策 |
このカスプ特異点について,準多面凸集合と鏡映群の方向から研究を進める.これからも土橋氏と東北大学数学教室内で週 1 回セミナーを行い,互いに得られた結果を報告し合って本研究を進める.トーリック型カスプ特異点を記述する形式扇について妥当な定義について考えているが,土橋氏により得られたさまざまなトーリック型カスプ特異点の例を記述できる形に形式扇の定義を完成させていきたい.また,固定形式扇について,これが適当な条件を満たす正の支持関数をもつ場合に扇として実現できることを示せたので,この定理を利用してさらに研究を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度はほぼ予定通りの金額を使用したが,1 万円以内の少額が残ったので翌年度に繰り越すことになった.
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した金額はわずかなので,翌年度の助成金と合わせて特に変更なく支出する予定である.
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