Painleve 方程式は新しい特殊関数の探求を動機として 19 世紀末に発見された 2 階常微分方程式であるが,現在では q-Painleve 方程式,楕円 Painleve 方程式などの一般化も導入されている.この研究では,これらの Painleve 型方程式の解のタウ関数として現れる特殊多項式(梅村多項式など)の組合せ論的構造を解析し,その組合せ論的構造の由来を明らかにすることを目標としている. 2017 年度は,前年度の研究に引き続いて,次のような研究成果を得た.前年度の研究において予想した C 型ルート系に付随した Q 関数(Hall-Littlewood 関数において t=-1 としたもの)の積に関する構造定数の正値性の証明を目指して研究を進め,Pieri 型公式を証明するとともに,同様の手法を用いることによって,factorial Q 関数の factorial パラメータが異なる場合の Pieri 型公式を与えた.また,KP 階層に関連して前年度の研究では skew Schur 関数に対する Giambelli 型公式を扱ったが,Schur 多項式(と有理 Schur 多項式)について,新たな行列式による表示式を見出すことによって行列式に対する Sylvester の公式を用いると Giambelli の公式が直ちに導かれることを示し,行列式に対する新しい Cauchy--Binet 型の公式を与え,歪 Schur 関数に対する Lascoux--Pragacz の公式に簡明な別証明を与えた.さらに,UC 階層に関連して,分割の対に対して定まる有理型 Q 関数について,Hall--Littlewood 多項式の特殊化として定義されるものと,Cauchy 型公式から定義されるものとの間の関係を明らかにした.
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