研究実績の概要 |
平成27年度は,代数曲線上の確定・不確定特異点を許す放物ヒッグス束や放物接続のモジュライ空間の構造を解析するために、S. Szaboとの共同研究で導入した見かけの特異点とその双対座標の理論を精密化した.特に, 既約なヒッグス束や接続とそのベクトル束 E の正則切断の組に対して, 自然な部分束 F が定義され0 ->F ->E -> E/F ->0という代数曲線上の層の完全列ができ, ねじれ層であるE/Fの台として, 見かけの特異点がとらえられる事がわかった.さらに放物ヒッグス束の時は,Beauville-Narasimhan-Ramananの理論より,ヒッグス束のスペクトル曲線とその上の因子(または直線束)の情報と、もとのヒッグス束の情報が同値であり, そのことから重複度を含んだ形で見かけの特異点とその双対座標が定義できた.そしてヒッグス束のモジュライ空間がもとの直線上のある直線束の点のヒルベルト概形と双有理同値であることが示せた.一方、放物接続のモジュライ空間においては, 接続の微分の部分の影響があり標準的にはスペクトル曲線が定義出来ないので記述は複雑になるが,ある種のテクニックを使って乗り越えられそうである.また接続やHiggs束のモジュライ空間は自然な正則シンプレクテック構造を持つが,モジュライ空間から,その下部構造である放物束を対応させる事により,モジュライ空間からその半分の次元のモジュライスタックへの写像が定まり, ファイバーもラグランジアンになる.一方、見かけの特異点の定めるモジュライ空間から,代数曲線の対称積への写像も定義されるがこの写像のファイバーもラグランジアンになる事がわかる.ヒッグス束のモジュライ空間上のスペクトル曲線のヒッチン系の幾何を解析する事により, 放物接続や放物ヒッグス束の確定特異点・不確定特異点の情報がある程度得られることが分かった.
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