研究課題/領域番号 |
15K13429
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
尾角 正人 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70221843)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 量子群 / 四面体方程式 / マルコフ過程 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は2次元格子模型の可解性を保証するヤン・バクスター方程式の3次元版類似である四面体方程式を量子群の表現論と関連づけて研究することである。昨年度の後半から、確率論における可積分なマルコフ過程と本研究課題である四面体方程式や量子群との関連が明らかになってきたので、研究協力者国場とともに研究の重点をこちらの方にシフトさせている。 今年度はまず、1次元周期格子上の完全非対称ゼロレンジ過程(TAZRP)とよばれるマルコフ過程の多種(multi-species)版を考察し、四面体方程式の解やA型量子アフィン代数の対称テンソル表現に付随した組合せ論的R行列を用いて定常状態を記述した。また、その非斉次な一般化も考察した。 次に、上記の多種TAZRPや今までに知られていた多くの1次元可積分マルコフ過程を含むような確率過程を、A型量子アフィン代数の表現論を駆使して構成した。その際にもとになるビルディングブロックは、従来から知られていた対称テンソル表現の量子R行列を、ヤン・バクスター方程式を保存するように変形したものであることを発見した。このR行列は、行列要素が0以上であり各列の和が1であるという確率条件を満たすので、確率論的R行列とよぶことにした。今年度後半はこのマルコフ過程の研究をさらに推し進め、定常状態をq振動子代数の元の無限積のフォック空間におけるトレースとして表示した。ここでも可積分系研究に由来するザモロドチコフ・ファデーフ代数が効果的に活用される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究目的からはややずれてきているが、今年度の研究は今までの1次元可積分マルコフ過程の研究の面目を一新するものであり、定常状態の行列式表示に対しても、今後組合せ論的表現論において新たな進展が予想される。
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今後の研究の推進方策 |
今年度同様、量子群の表現論でわかっている知識を総動員して、可積分マルコフ過程の研究を進展させる。研究協力者国場との研究交流を緊密にし、積極的に海外の研究集会で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
可積分マルコフ過程に関する最新の結果を海外の国際研究集会で発表する計画を立てていたが、国内で発表する機会があり、旅費が大幅に安く済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、海外の国際研究集会で発表するか、海外の研究者を招聘するかして、旅費を多めに使用する。
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