研究課題
本研究の目的は、離散的な対象であるグラフに対する「曲面論」を展開することである。与えられた滑らかな曲面を離散化し、離散的なデータを用いて幾何学的量を計算する研究は最近活発に行われているが、本研究ではそれとは逆に与えられたグラフに対して、その背後に隠れた連続な曲面を特定することに関心がある。そのために、分担者、研究協力者と定期的な会合を持ち、研究を推進した。その結果、3分岐グラフに対する曲面論(離散曲面論)の構築、及び与えられた離散曲面から細分列を構成する手法を確立した。また、細分列がハウスドルフ位相に関してコーシー列をなすことを明らかにした。「離散極小曲面」「離散平均曲率一定曲面」を定義し、具体的な例についてガウス曲率・平均曲率を計算するコードを書いた。先行研究や、古典的な曲面論による計算結果と比較をし、本研究で定めた定式化が妥当であることを確かめた。これらは論文として出版した。細分列はハウスドルフ位相に関してコーシー列をなすことが示せたが、極限のもつ特異集合については今後の課題である。国際的な第一人者であるオーストラリア国立大学のStephen Hyde氏、極小曲面や平均曲率一定曲面の可視化の第一人者であるベルリン自由大学のKonrad Polthier氏を招聘し、離散曲面論と調和写像に関する研究討論を中心としたワークショップを、disorder系物質の数理的研究を先導するリヨン大学のJohannes Kellendonk氏、ジョージア工科大学のJean Bellissard氏、プラハ大学のPavel Exner氏を招聘しスペクトル解析に関する国際研究集会を開催し、研究の世界動向を把握するとともに、本研究の成果について情報発信を行った。
【論説・記事】・数学,化学と出会う(4)アモルファス材料のトポロジー解析,小谷元子,現代化学(541), 2016・大人のための最先端理科(第119回)数学 データを構造解明へつなげる 数学と材料開発の意外な相性,小谷元子,週刊ダイヤモンド,105(21), 2017・離散と連続をつなぐ幾何(特集 発展する微分幾何:その多様性、面白さ、そして美しさ),小谷元子,数理科学,55(6),2017
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 6件、 招待講演 11件)
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