現代の数学には,特異点理論や可積分系などに現れる曲面などを可視化して,より直観的に理解することにより,研究面でも大きな進展が期待される分野が多くある.近年は,コンピュータを用いて3Dプリンターで幾何学模型を出力することも一般的になった.本研究では,3Dプリンターの技術では達成できないような,金属を削り出して制作する高精度の3次元模型,離散群の極限集合,特異点理論,葉層構造,可積分系など,従来の方法では扱うことが困難であった対象の模型の制作を目指している.曲面の模型の精度についてであるが,基本的には,離散点データからメッシュを構成し,それぞれのメッシュについてよい近似をとって構成する方法がとられているため,理論的に誤差が生じるのはまぬかれない.したがって,精度を上げるために,どのようなメッシュ分割と,ファイル形式が適切かという問題が生じる.離散データから,単体分割された曲面を構成する標準的な方法は知られていないので,この点で,いくつかの理論的な側面を克服する必要がある.研究代表者は,ヤマダ精機との共同研究により,1/100mm未満の精度を実現する技術を開発してきた.精度を上げるために,離散点データとメッシュに加えて,曲面の法線方向のデータを加味する手法を開発した.離散群の極限集合などの対象については,クリスタルガラスの中にレーザー光でプロットする手法を開発し,4次元クライン群の極限集合の3次元模型について,これまでに試作を行ってきた.本研究では,3Dプリンターなどでは表現できないような対象も含めて,より精度の高い3次元実体模型の制作のための技術を確立した.
|