研究課題/領域番号 |
15K13436
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山口 孝男 京都大学, 理学研究科, 教授 (00182444)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 特異曲面 / CAT(1)-空間 / 線織面 |
研究実績の概要 |
2次元CAT(1)空間の局所構造の研究は、曲率の上界の本質を追求する上で極めて重要である。昨年度の研究に引き続き、2次元CAT(1)空間の局所構造の研究において鍵となる、CAT(1)-空間内の線織面が内部距離に関してCAT(1)-空間になるかどうかを考察した。A.D.Alexandrovの古典的な研究によれば、内部距離ではなく線織面を写像とみなし、線識面の定義域のパラメータ空間に、写像による引き戻し距離を入れたものがCAT(1)-空間になる事が知られている。しかし2次元CAT(1)空間の局所構造の決定のためには、写像による引き戻し距離ではなく、線織面が内部距離に関してCAT(1)-空間になることを示すことが必須である。まず線識面を定める基となる二つのリプシッツ曲線が自己交差を持つ場合は、線識面はこの意味ではCAT(1)-空間にならない。従って自己交差を持たない場合が問題となるが、CAT(1)-空間のサイズが大きい場合、そのサイズの大きさが大域的な考察の困難さを引き起こすことが分かった。そこで当初の問題に立ち返り、2次元CAT(1)空間内の一点の周りの微小領域に問題を制限した結果、線識面が内部距離に関してCAT(1)-空間になる事の証明が大きく前進した。すなわち、線識面上の測地三角形に対して比較定理を示す際に、測地三角形の頂点が悪い部分(線識面上に発生する衝立て状の部分)に属する場合の取り扱いだけが課題として残されている。(永野幸一氏(筑波大学)との共同研究)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2次元CAT(1)空間内の一点の周りの微小領域に問題を制限した結果、線識面が内部距離に関してCAT(1)-空間になる事の証明が大きく前進した。線識面上の測地三角形の頂点が悪い部分に属する場合に、頂点の周りの取り扱いだけが課題として残されている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究で、線識面上の測地三角形の頂点が悪い部分に属する場合に、2次元の特徴を活かして、頂点の周りの取り扱いの困難さをクリアーする予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた永野幸一氏(筑波大学)の京都大学への招聘が、先方の事情により実現できなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度は永野幸一氏(筑波大学)の京都大学への招聘を実現するとともに、これまでの研究打ち合わせを継続していく予定である。
|