・CAT(1)空間の局所構造は、2次元に限っても極めてワイルドであり。その構造の決定は曲率の上からのバウンドの根源的意義を理解する上でも興味深い。正則点集合の構造については、ある程度の結果が知られているものの、特異点集合の構造は全く未解明の状況であった。本研究において永野幸一氏(筑波大学)との共同研究により、これまで克服できなかった難点をクリヤー出来た。すなわち、2次元CAT(1)空間内の任意の位相的特異点のまわりの微小領域において、位相的特異点集合を囲む形で自然に定義された細い線識面が、その内部距離に関してCAT(1)空間になることを証明することに成功した。A.D.Alexandrov自身の研究により、内部距離ではなく線織面を写像とみなし、線識面の定義域のパラメータ空間上の誘導距離に関して線識面がCAT(1)-空間になる事が知られていたが、我々の目的のためには、線識面が誘導距離ではなく内部距離に関してCAT(1)-空間になることを示す必要である。線識面の定義測地線の振る舞いや線識面の各点における方向の空間を詳細に調べることにより、内部距離をもつ線識面がAlexandrovの考察したパラメータ空間上の誘導距離に等長的であることを証明することができた。この手法の副産物として、線識面が2次元円板に同相であることも直ちに従う。この結果は2次元CAT(1)空間の局所構造を解明する上で鍵となるものであり、これを基にして今後は、2次元CAT(1)空間の局所構造を、有限個のCAT(1)-空間リプシッツ円板の貼り合わせとして決定し、論文を仕上げて行きたい。 ・これまでのユークリッド空間における自己相似集合を、曲がった空間上の漸近的自己相似集合の概念に拡張し、そのハウスドルフ次元を決定した。具体例として、曲面上のシェルピンスキー・ガスケットのハウスドルフ次元を決定した。
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