昨年度に引き続き「(5)Casson不変量の理解の深化」について取り組んだ.昨年度の研究で得た「Casson不変量の情報の一部である不足符号数に対する特異点を用いた解釈」の数学的(特に特異点論的)意味を深めることで,その解釈が成立する詳しい条件を特定した. また,「Chern-Simons摂動論の「完成版」の候補となる不変量の構成に部分的に成功した.これはBottとCattaneoによる不変量をもとにして,その構成をよりフレキシブルなものにしたものである.Bott-Cattaneoの不変量は枠と呼ばれる構造付きの3次元多様体とその上の局所系の組に対する不変量である.本研究で得た不変量は枠よりもフレキシブルな「サイクル」を構造として用い,しかも不変量からサイクルの選択の曖昧さを取り除くことにも成功した. ただし,不変量の性質の解析は少し難航しており,今後の課題として残った.
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