研究課題/領域番号 |
15K13438
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐伯 修 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (30201510)
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研究分担者 |
小林 真人 秋田大学, 工学資源学研究科, 准教授 (10261645)
山本 卓宏 九州産業大学, 工学部, 准教授 (60435972)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 安定写像 / データ可視化 / 特異ファイバー / ユーザーインターフェース / 普遍複体 / 多項式写像 |
研究実績の概要 |
可微分多様体間の位相的安定写像全体は,写像空間において稠密であり,どんな写像も安定写像で近似できる.ところが驚くべきことに,具体的な安定写像,特に幾何学的に重要な性質を持つ安定写像を具体的に構成することは非常に困難であることが知られている.実際これまで,そうした具体的な安定写像を構成する方法として特に確立されたものはなく,状況に応じてアドホックな方法を用いて構成されてきた.そこで本研究では,これまでにない方法,特にコンピュータサイエンスにおけるビッグデータ可視化の手法を本質的に応用することにより,まったく新しい手法によりシステマティックに安定写像を構成する方法論を確立する.そして具体的に構成した安定写像を厳密に検証・論証し,微分トポロジーにおける種々の問題に応用し,安定写像論のイノベーションを推進することが当初の目的である. そこで平成27年度は,特異ファイバーの分類定理に基づいた形で,3次元領域から2次元空間への多項式写像の特異ファイバーを可視化し,さらにそうした写像を摂動して安定写像とし,その特異ファイバーまで可視化するユーザーインターフェースを開発した.そしてそれを試験的に簡単な多項式写像に適用し,そうした写像の構造の解析を開始した. 一方で,3次元境界付き多様体から2次元空間への安定写像の特異ファイバーの普遍複体のコホモロジーを計算することとReebグラフを用いた幾何学的議論により,境界付き曲面上のMorse関数のなす同境群を決定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3次元領域から2次元空間への多項式写像を具体的に与えたとき,その特異ファイバーを実際に可視化できるユーザーインターフェースを,コンピュータサイエンスの研究者の協力により整備できたことは,本研究課題の目的達成のために非常に重要である.このユーザーインターフェースは,さらに,与えられた写像だけではなく,それを摂動した写像の構造も解析できる点に大きな特長がある.こうして,これまで安定摂動の様子が解明されてこなかった高度に退化した写像の安定摂動の解析が進められる目途が立ったことになる.これにより本研究課題が予定通り,もしくはその予想を超える形で遂行できる期待ができるようになった.
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今後の研究の推進方策 |
多項式写像の可視化ユーザーインターフェースが開発できたので,それを用いて,これまで特異ファイバー構造や安定摂動が解明されていなかった具体的写像の様子を解析する.さらにそうした計算機による解析を,特異点論を用いた数学的議論により検証し,その理論的裏付けの研究を行う.ただし,そうした研究の中で,現在のユーザーインターフェースでは不十分となる事態も予想される.そうした際には再びコンピュータサイエンスの研究者の協力を仰いで,ユーザーインターフェースの改良,および新たな開発を行っていく.また,そうした研究を,具体的な安定写像の厳密な構成へと応用する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究連絡などのための出張旅費に関して,平成27年度においては旅程を計画していたものより短くし,その代わり平成28年度以降に研究連絡を追加で行った方が効果的に議論ができると判断したため.
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次年度使用額の使用計画 |
主に,研究連絡のための旅費に使用する.
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