研究課題/領域番号 |
15K13444
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宍倉 光広 京都大学, 理学研究科, 教授 (70192606)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 力学系 / 分岐 / カオス / フラクタル / くりこみ |
研究実績の概要 |
2次元のHenon写像やその類似について、パズル分割の手法を用いて、測度論的・エルゴード理論的研究を行うための研究を行った。まず、Yoccoz-BergerによるHenon写像に対するBenedicks-Carlesonの定理の別証明は、本研究を遂行する上で大きな指針となるので、彼らの手法について精査した。特に、Berger氏とは、3月の東京の研究集会で詳しくディスカッションする機会を得た。2次元の相空間でそのままパズル分割を構成するよりは、水平方向(大雑把に伸びる方向)の曲線族に対し、曲線ごとに分割を構成した方が、パラメータ空間の構造の解析に有効であることがわかった。 今年度は、まず、1次元のJakobsonの定理のパズル分割を用いた証明を見直し、特異点の再帰の様子をある程度指定することによって、ルベーグ測度に絶対連続な有限不変測度の存在を示すための十分条件を求めた。現在のところ、まだ、この手法によって、測度せいのパラメータ集合に対して、絶対連続な有限不変測度が存在することまではいえていないが、組み合わせ的な議論をより推し進めれば、この方向の証明が完成することが期待される。 また、Marti Pete氏との共同研究で、1次元のArnold familyについて複素拡張のパズル分割を構成する方法を検討中で、その基礎となるHairの存在の証明の方針がある程度わかってきた。この後は、それを用いて、1次元のArnold familyに対するJakobsonの定理の類似を研究する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1次元のJakobsonの定理のパズル分割を用いた証明において、ルベーグ測度に絶対連続な有限不変測度の存在を示すための十分条件がわかってきたのは大きな進展であり、それを用いて、1次元の場合の証明を完成させたい。 また、Yoccoz-Bergerの手法は参考になる点も多く、それをより組み合わせ的な定式化することが、一つの目標になる。 さらに、1次元のArnold familyは、2次元の面積保存系の代表である標準写像族に直接関係のあるものであり、そこでのパズル分割の構成とその定量的研究は、今後の重要なステップになると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
1次元のJakobsonの定理のパズル分割を用いた証明をきっちりとした基礎付けを行い、論文として仕上げていく。 P. Berger氏とさらに討論を行い、Yoccoz-Berger流のパズル構成法と代表者の手法の比較検討を行い、2次元計で可能なパズルの手法を研究する。 Arnold familyについて、Hairの構成を厳密に証明し、そこから得られるパラメータ空間のパラパズル分割の研究に結びつけていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学での講義の準備や教室運営のための委員会業務等で、予定していた研究集会(イギリス、金沢大学)などに出席することが出来なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、研究集会にも積極的に出席し、可能ならばこの分野の研究者(P. Berger, M. Yampolsky, D. Cheraghi氏等)を招聘するか訪問して、討論する機会を作る予定である。
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