本研究の目標は、非可換確率論における独立性の概念の構成と分類を行うことである。前年度までは、非可換確率論における独立性概念の個別の具体的例を構成することを目標とし、Bozejko-Speicher の q-Fock 空間に付随すると考えられる仮想的な独立性として q-独立性を構成しその基本的な性質を、特に非コンパクト台の場合を中心に調べ、また、Pusz-Woronowicz の捻じれ Fock 空間に付随しうると考えられる捻じれ独立性をについて同様の考察を進めたのであったが、本年度は、将来の独立性概念の一般論の構築を念頭に置き、上記の1径数変形 Fock 空間たちとは少し毛色の異なる空間として、Accardi-Bozejko の相互作用 Fock 空間を取り上げ、これがいつ独立性の概念を持つのかその条件について調べた。その結果、相互作用フォック空間は無限個のパラメータ持っているがそのほとんどの値について、相互作用フォック空間はどんな普遍積からの汎関数中心極限としても生じないことがわかった。このことは、相互作用 Fock 空間は一般には独立性を持てないことを意味している。また、さらに研究を推し進めた結果、相互作用 Fock 空間は、普遍積の概念を弱め射に関する*同型という条件を弱めてやれば、この弱い意味での独立性概念に関しては、これを構成することができそうであるという感触が得られた。現在、この構成について細部を検討しているところである。
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