研究実績の概要 |
ランダムポテンシャルをもつシュレーディンガー作用素の連続モデルに対して、その散乱理論の基礎的研究を行った。先行研究として Helsinki 大学の M. Lassas, L. Paivarinta, E. Saksman による2次元のものがあり、さらに最近 T. Helin も関連した研究を行っている。このため、M. Lassas, T. Helin と e-mail によって研究連絡を行い、最近の研究情報を収集した。連続モデルのシュレーディンガー作用素に関しては3次元においても確率論的逆散乱理論が構築可能であることがわかり、基本的なアイディアを検討した。また、離散モデルの場合の研究方向について討論し、エネルギーとメッシュサイズ双方を考慮した漸近解析に将来の方向があることを確認した。Isozaki-Korotyaev の論文(Inverse problems, trace formula for discrete Schroedinger operators, Ann. Henri Poincare, 2012, 751-788)により離散モデルの時にはポテンシャルを持たないシュレーディンガー作用素のレゾルベントが適当な重みを付けたヒルベルト空間の中でエネルギーパラメータをスぺクトルに近づけたときに極限をもち、それがエネルギーに関する一様評価を持つことが知られている。特にエネルギーの端点付近における一様評価が重要であるが、メッシュサイズを小さくした場合の対応する評価に問題解決の鍵があることが予測できた。ポテンシャルによる摂動を導入した場合にはメッシュサイズとエネルギーパラメータ双方に関連した2重スケールによる漸近解析を行うべきことを議論した。
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