研究課題/領域番号 |
15K13449
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
隠居 良行 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (80243913)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 圧縮性Navier-Stokes方程式 / 漸近展開 / スペクトル / 非圧縮極限 / 特異摂動 / マッハ数 |
研究実績の概要 |
1.人工圧縮系と非圧縮Navier-Stokes方程式の定常解のまわりの線形化作用素のスペクトルの関係における境界層の影響を調べた.人工圧縮系は非圧縮Navier-Stokes方程式の連続の方程式に小さいパラメータ(人工的マッハ数)を乗じた圧力の時間微分を加えて得られる双曲-放物型方程式系であり,人工圧縮系と非圧縮Navier-Stokes方程式は同じ定常解の集合をもつ.人工的マッハ数ゼロの極限で非圧縮Navier-Stokes方程式が得られるが,この極限は特異極限となっており,極限過程で境界層が現れる.今年度の研究では,非圧縮系の線形化作用素のスペクトルが左半平面にあるとき,定常解の速度場がある意味で小さければ,十分小さい人工的マッハ数に対して人工圧縮系の線形化作用素の境界層に対応するスペクトルが左半平面にあることを示すことができた.この結果は非圧縮流体の熱対流を記述するOberbeck-Boussinesq方程式に対して適用できるものであり,人工圧縮系と非圧縮系に対して熱伝導状態からの分岐周期的対流パターンは同じ安定性をもつことが導かれる. 2. 全空間上の圧縮性Navier-Stokes方程式の静止定常解のまわりの解の時間無限大における漸近挙動を考察した.静止定常解の摂動の時間無限大における漸近的主要部は線形化問題の解で与えられることが知られていた.今年度の研究においては,摂動の時間無限大における漸近展開の展開第2項を導出し,第2項に方程式のもつ非線形性が現れることを示した. 3. 圧縮性Navier-Stokes方程式における2つの無次元パラメータがある関係を満たすとき,そのパラメータをゼロとする極限として形式的にOberbeck-Boussinesq方程式を導出した.パラメ―タに関する条件を満たすいくつかの例を与えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全空間上の圧縮性Navier-Stokes方程式の時間無限大における漸近展開の展開第2項を導出し,方程式のもつ非線形性の時間無限大における影響をみることができた. 人工圧縮系の定常解のまわりのスペクトルの構造に関して,境界層に対する部分の挙動の性質を解析する第一歩を踏み出すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
半空間上の圧縮性Navier-Stokes方程式の解の時間無限大における漸近展開第2項の導出に取り組み,全空間問題の結果と比較して非圧縮極限における境界層の数理構造の解明を目指す. 人工圧縮系の定常解のまわりのスペクトルの構造に関して,境界層に対する部分の挙動の性質のさらなる考察を進める. 圧縮性Navier-Stokes方程式における2つの無次元パラメータをゼロとする極限として形式的にOberbeck-Boussinesq方程式を導出したが,この極限の数学的な正当性の証明を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究集会開催補助のための謝金を他経費で賄うことができた.予定していた外国人招へいがキャンセルとなった.
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き,情報収集,招へいのための旅費および研究集会開催のために使用するとともに,海外国際集会に参加して積極的に成果発表を行う.
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