研究課題/領域番号 |
15K13452
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大本 亨 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20264400)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 射影微分幾何学 / 特異点の判定法 / アフィン代数幾何 / 同変コホモロジー |
研究実績の概要 |
平成27年度は主に以下の2テーマについて研究を進めた.(1)射影空間内の非特異曲面の局所的分類:曲面のモンジュ形式のジェットを射影変換により余次元4まで分類した(研究協力者の加葉田雄太朗君(北大院生)らとの共同研究).これは関数の分類理論を用いたアーノルド・プラトノーバの分類(余次元2までに対応)を刷新するもので,新しいアイデアは中心射影の特異点分類を根本的に用いているところである.さらに線織面や可展開面の局所分類も同じ手法で行った(現在,加葉田君らと共同で論文執筆中).この研究方向は1900年前後の射影微分幾何学(ダルブーやヴィルチンスキらによる射影曲面の微分不変量の研究)を特異点論の観点から復刻し発展させるものである.近年,こうした古典的微分幾何は数理工学(CAD,映像理論等)の分野で再評価されており,本申請課題の目標でもある実学的応用を視野に入れている.(2)アファイン多項式写像の特異点の数え上げ理論:所謂数え上げ幾何の対象となるものはコンパクト多様体(モジュライ空間)上のある種のデグリーであるから,コンパクトでない空間上では使えない.そこで,一旦,斉次多項式に特殊化してトーラス同変コホモロジーでの計算を通すというアイデアでこの問題への解法を導いた.一昨年,ポーランドのグループによりアフィン代数幾何によるアプローチが提案されたが,我々の方法は彼らの結果をすべてカバーするだけでなく,同種の問題の決定的な解答を与える.ロボティクス等の数理工学では実多項式系の解の個数評価がしばしば本質的な問題として現れるが,我々の手法はこうした問題の上限評価(複素解評価)に繋がる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は対数的ベクトル場の理論を用いた「写像の特異点の判定法」に関する基礎固めを想定していたが,射影曲面の分類の研究が思いのほか進展したので,この方向を重点的に進める事にした.2015年6月に開催された国際シンポジウム「Singularities in Generic Geometry」にて成果発表した際に反響があり,多くの専門家から助言を得て議論したことで,研究を適切な方向で推進できた.また,インターネット環境の充実により1世紀以上前のヴィルチンスキらの多数の文献を"発掘"しその周辺の古典的文献を網羅的に検索できたのが要因のひとつでもある.
|
今後の研究の推進方策 |
(1)現在,射影微分幾何の文脈で議論しているが,ユークリッドやアファイン微分幾何の状況でも同じ研究方向があり得る.とくにクリフォード代数を用いた「直線の微分幾何」を特異点論の立場から再構築し,線織面や可展開面の応用研究に役立てる.特異点の判定法に関する基礎付けは,特異点論と対数的ベクトル場の専門家(H.ハウザーら)と研究連絡を行うことを計画する.(2)すでに基本的な着想はできたので,証明の肉付けと論文執筆を進める.さらに具体的な動力学機構(4軸機構,6軸プラットフォームほか)に現れる特異点分岐の数え上げに応用する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初,招聘を想定していた外国人研究者のスケジュールがあわず招聘を見合わせたため.
|
次年度使用額の使用計画 |
28年度に代表者が海外渡航し当該研究者との研究連絡を進める.
|