平成29年度は以下に従事した.(1)ブラジルと日本の若手研究者(デオリンド・シルバ氏,加葉田氏)との共同研究として,射影空間内の線織面及び可展面のモンジュ形式を射影1次変換により分類する理論を発展させた.(2)幾何的代数(=クリフォード代数)を用いた微分直線幾何への特異点論的アプローチを発展させた.(3)射影空間曲線をある視点から射影して得られる平面曲線の特異点分類は80年代になされている.この分類とトム多項式理論を組み合わせて,曲線の特異射影に関する種々の数え上げ公式を与えた. 研究期間全体を通じて,以下の3テーマを主に扱った.(1)一連の共同研究は特異点論の手法による曲面の射影微分幾何の研究であって,100年近く進展のなかった局所理論(ダルブー・ヴィルチンスキ)の復興を目指すものである.最初の布石としてある程度満足できる成果を得たと考えている.例えば,マンフォードらが提起していた「放物曲線およびフレクノード曲線の局所的分岐の分類問題」について,2パラメータまでの分岐の分類を与えた.(2)幾何的代数と特異点論に関する研究は,アーキテクチュラル幾何等に向けた「応用特異点論」を準備するものであり将来性が十分にある.(3)特異点分類理論から古典的数え上げ幾何(ヒルベルトの第15問題など)を整理して,スツルムフェルズらが進めている代数的ヴィジョン理論への応用研究に向けた特性類理論からの新しいアプローチを提案した.これは新奇な方向であって発展性がある.当初はロボティクスへの応用(ロンガらの仕事の一般化)を想定していたが,上記課題が発展したために計画を変更した.
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