Poisson方程式のDirichlet境界値問題を,最も標準的な三角形一次要素による有限要素法で近似した場合,近似関数は,三角形分割が正則性の条件を満たす限り,分割パラメータhを0に近づけたとき,真の解にH1あるいはL2のノルムの意味で収束する.このことは,すべての教科書に述べられている基本事項であり,また,正則性の条件は,分割に現れる三角形の内角の最小値が,分割に無関係な正定数で下から押さえられていることと同値である(最小角条件).ただし,これは必要十分条件ではなく,実際,より一般的な最大角条件や外接半径条件も知られている.また,有限要素近似解が,最大値原理を満たすためには,分割がDelaunay型であることが要請される.さらに,マイナスラプラシアンの有限要素近似が,解析的半群を生成したり離散最大正則性を満たすためにも,やはり,Delaunay型であることが要請される.分割の非一様性を制御する数学的概念に,逆仮定があり,Lpノルムでの評価導出や放物型問題の解析においては必須である.しかし,逆仮定と条件数の関係に付いては,明確な研究は存在しない.そして,現実的な応用計算で用いられているmesh refinementにおいて,その良し悪しを計る基準は事後誤差評価のみである.このように,最も単純な三角形一次要素に限っても,何が``良い''要素形状,あるいは何が``良い''分割なのかを数学的に明快に表現する一貫した理論はまだ存在しない.ユーザが目的に応じて経験的に選択しているのが現状である.本研究では,この溝を埋めるための試みとして,三角形一次要素に対象を限定して、俯瞰的な立場から各条件を整理した.
|