研究課題/領域番号 |
15K13455
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 昌宏 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (50182647)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 凝集 / 特異拡散 / 数理モデル / 素過程 |
研究実績の概要 |
核廃棄物の地中処理などに必要な地下施設のコンクリートなどは超低速であるが溶解し、内部の汚染物質が土壌中に拡がっていくとともに、コンクリ―トなどの成分も最終的に凝集して固定化されていく。このように、超低速な溶解とその後の拡散を統括した数理モデルの構築が、本研究の目標である。平成27年度には、このような複雑な過程をいくつかの素過程に分解して、それらの数学モデルの提案やその数学解析、数値計算を行った。最終的には、解析や数値計算が確立した素過程を総合することによって、もともとの超低速の溶解と特異拡散現象を解明しようとしている。平成27年度は、 1.超低速の溶解を構成する素過程についての既存の知見のサーベイ 2.素過程としての凝集の数理モデル 3.素過程としての拡散の数理モデル の3つのステップに取り組んだ。1については、超低速の溶解現象の物理の専門家である塚本勝男・東北大学客員教授を中心としたグループからサーベイを受けて、研究討論を重ねて、既存のモデルについて知見や研究成果を収集した。2.については、凝集の1つの数理モデルである粒子の成長に関するタイムコーン・モデルについて数学的な単純化を行い、空間3次元においても実用上可能な高速の数値解法を創出した。3については、非整数階拡散方程式を用いたモデル化により、ロングテールとよばれる密度の特徴的な空間分布のパターンを再現する考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画である、もともとの超低速の溶解と特異拡散現象の解明のために、素過程に分解し、それらを個々に解析していく方針に沿って、初年度である27年度は研究を遂行した。その結果、 1.超低速の溶解を構成する素過程についての既存の知見のサーベイ 2.素過程としての凝集の数理モデル 3.素過程としての拡散の数理モデル について、ほぼ予定通りの成果を収められたと判断している。2および3の成果については、研究成果の欄にもあるような論文を出版した。また1.については、塚本勝男・東北大学客員教授、羽田野祐子・筑波大学教授、川西琢也・金沢大学准教授らとともに工学的な知識や知見の収集を行い、サーベイを受けた。その結果、本研究目的のための関連分野の専門的知識のサーベイも着実に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のフェーズは以下の7段階を計画している: 1.超低速の溶解を構成する素過程についての既存の知見のサーベイ 2.素過程としての凝集の数理モデル 3.素過程としての拡散の数理モデル 4.溶解に伴う内部汚染物質の特異拡散 5.素過程の総合としての超低速の溶解の数理モデル 6.超低速の溶解の数理モデルの数学解析 7.提案された数理モデル式の現象論および実験、測定結果からの評価 平成27年度は1~3に集中して取り組んだ。平成28年度は、フェーズ2と4の課題に主に取り組む。フェーズ5.の素過程の総合としての超低速の溶解の数理モデルの構築が、本研究の核心部であり大きな困難が予想されるので、フェーズ5.に次次年度(平成29年度)に本格的にアタックすることを念頭において、フェーズ2と4に取り組み、同時にそれを踏まえてフェーズ1.のサーベイを28年度も引き続き行う。専門的知識の獲得などのための研究打合せや講演謝金を平成28年度も計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、招へいしてサーベイを行うことを計画していた在外の研究者の招へいが先方の都合で延期になり、さらに、それ以外に行っていた既存結果のサーベイが平成27年度の研究実施に関しては十分であり、その数学的な考察を終了させてから、新たなサーベイを始めたほうが効率的と判断したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
招へいを延期した在外の研究者の招へいを平成28年度に行う。
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