研究実績の概要 |
モンテカルロ積分とは、s次元超立方体上定義された非積分関数fに対し、その超立方体上に一様ランダムにサンプル点を有限個生成し、fのサンプル点上での値の平均を持って、fの数値積分を近似する手法であり、サンプル点の個数Nに対して誤差がN^{-1/2}のオーダーで収束する。準モンテカルロ法では、サンプル点を「一様ランダム」ではなく、より計画的な配置を選ぶことにより誤差の収束をN^{-1}あるいはそれ以上に高速化させる手法である。本研究では、点集合の一様性の尺度として「パラメータ付きWAFOM」を用い、さまざまな次元、さまざまな関数、さまざまな点集合においてその効果を数値実験により調べた。もっとも顕著な効果が見られたのは空間の次元が2から5と低く、被積分関数が無限回偏微分可能かつ各階偏導関数のノルムが増大しない場合であり、特にs=2,3,4では既存の点集合よりもはるかに誤差収束が速かった。逆に、被積分関数が微分不可能であるばあいには、WAFOMによる選別の効果は見られなかった。次元が大きな場合でも、被積分関数が上述のような性質を持つ場合にはWAFOMによる選別の効果が見られた。関連する研究として、点集合の一様性の尺度であるt-valueを最適にするような生成行列の構造を調べた(梶浦、鈴木との共同研究。)結果として、2元体において生成行列を(I,B,B^2)とするデジタルネットがt-value 0を実現するには、Bの位数が3であることが必要条件であることがわかり、線形漸化式による良いデジタルネットの構成の難しさを示した。ほかに、擬似乱数の検定法に関して、検定法が用いている確率分布の近似公式の誤差により「検定法が正しくなくなる」例を研究した(原本との共同研究。)
|