研究課題/領域番号 |
15K13461
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
石渡 哲哉 芝浦工業大学, システム工学部, 教授 (50334917)
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研究分担者 |
齊藤 宣一 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (00334706)
名和 範人 明治大学, 理工学部, 教授 (90218066)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 非線形偏微分方程式 / 爆発解 / 領域爆発 / 爆発曲線 / 再爆発現象 / 数値計算法 |
研究実績の概要 |
領域爆発問題については、ある準線形放物型方程式に現れる爆発解についての研究を進め、数値計算によりタイプ2爆発解の場合の爆発領域の特徴を抽出した。これについてはRIMS研究集会で発表を行い、またこの数値解析的研究を受けて、領域の広さをその領域におけるラプラシアンの固有値問題に帰着し特徴づけを行った。また、限定された状況であるが、1次元問題で対称性のある初期値の場合には、ある種の仮定のもとで爆発領域が2つの領域に分割され、一方では自己相似解よりも速く、もう一方では自己相似解より遅く爆発することが分かり、更に具体的な爆発レートまで理論的に導出することができた。この結果についてはほぼ論文としてまとめ、投稿すべく体裁を整えているところである。 非線形シュレディンガー方程式については、斎藤グループが爆発解を再現する数値計算スキームを開発し、更に詳細な誤差評価を得ることができた。また、この問題に現れる 再爆発現象については、まだそれを再現する数値計算法の構築には至っていないが、名和氏と共同で非線形シュレディンガー方程式を、非線形媒質中のレーザービームの自己集束現象として捉えなおすことにより、幾何光学的な導出が可能となることを確認した。この導出法を元に数値計算方法が構築できる見込みがあるのではないかと現在想定し、継続して議論をしているところである。 非線形波動方程式に現れる爆発曲線問題については、数値計算方法として各点での時間刻みをコントロールする方法は構築でき、安定に数値計算ができることを数値実験では確認ができた。ただし、その理論的裏付けは未解決である。また別の方法として、Cho氏が開発した方法も利用でき、斎藤氏の共同研究者の佐々木氏がこれを利用し、爆発曲線の再現に成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非線形拡散方程式の爆発領域問題については、数値計算による予想を一部理論的に証明するところまで研究が進んでおり、十分な成果を得ていると判断している。非線形シュレディンガー方程式についても、数値計算方法の1つが数学的裏付けと共に提案されている。再爆発現象の再現はいまだ困難を残しているが、幾何光学的なアプローチを見出しており、今後の研究につながっている。爆発曲線問題についても、数値計算上はうまく行く方法が少なくとも2つは提案できており、1つは我々ではないが非常に友好的に研究交流を進めているCho氏が数値計算法についての数学的な結果を残しており、一緒に議論する体制が整いつつある。以上、概ね順調に研究は進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
爆発領域問題については、今後も今の方針、つまり、数値計算と理論的研究を相補的に進め、現在は限定されている状況でしか明らかになっていない爆発領域と爆発オーダーとの関連などについて研究を進めていく。 再爆発現象については、まずは非線形シュレディンガー方程式の幾何光学的な導出方法を離散的に考えることにより、計算方法のプロトタイプを構築したい。 爆発曲線問題については、1つはCho氏の方法をより一般的な問題に適用できるよう拡張する方法と、もう1つは現在プロトタイプとして数値計算自体はうまく行っている方法の理論的裏付けを進める方向で研究を進める方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国際学会参加を家族の健康に関する状況の悪化により取りやめた。また、海外研究者の招聘を行ったが、当該研究者が別の経費で一定期間日本に滞在することになり、本研究費での支出が国内移動分のみとなったことなどが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は秋に本研究課題に関連する国際ワークショップを企画しており、前年度余剰分として発生した資金をそのワークショップのために使用する。また、現在分担者の追加申請中であり、爆発曲線問題において結果を残している若手研究者に分担金を配分し、研究を推進する。
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