アルミを用いた金属鏡天体望遠鏡製作の要素技術の開発を行った。分光観測専用望遠鏡の主鏡面の結像性能はシーイングサイズと同程度の3秒角でよいと割り切り、主焦点から光ファイバーリンクを用いて分光器に直接入射する観測システムを構想した。アルミ合金には優れた機械切削性というガラスにはない特徴があるので、主鏡の軽量化を簡単に行うことができるメリットがある。従来の金属鏡の製作では柔らかいアルミを研磨して金属光沢を得るのは難しいとされ、硬いニッケルを無電解メッキしてその面を研磨していた。我々は上質な金属光沢にはこだわらず、反射率はニッケルと同等の60%程度を想定し、直接アルミ面を研磨するアプローチを試みた。 直径2.1m・焦点距離3.5m・8分割鏡をデザインし、高精度に切削加工された(2μm rms)軽量な(17 kg)パネルを製作した。パネル支持は球面座と1軸ステージを組み合わせた簡素な3点支持法とした。切削加工による数cmスケールの周期的な凹凸パターンを除くためピッチ盤と耐水ペーパー(#2000-5000)や研磨剤(粒子径3μm)を用いた研磨を行った。Hartmann測定を行い、その解析から得られる鏡面形状を見ながら研磨を進め、0.5μm rms(結像性能約10秒角)の鏡面精度を得た。この数値は当初目標の3秒角と比べて約3倍悪く、今後に課題を残す結果となった。最終段階はピッチ盤にフェルト状のバフをつけて光沢研磨を行い、反射率60%を得た。 2枚の分割鏡の相互アライメントは、現状の支持構造では約15分間で5秒角のずれが発生するが、事前誤差測定によるlookup-table方式で補正を行い、観測を進める予定である。光ファイバーリンクはコア径200μmファイバー(12秒角相当)を用いて製作した。低分散分光器(λλ430-800 nm、分解能約1.7nm)を用いて試験観測を行った。
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